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子どもを語学の天才にするために、大人は工夫の天才になろう

廣森 友人 廣森 友人 明治大学 国際日本学部 教授

ネイティブスピーカーの派遣や地元大学との提携

 では、小学生における言語インプットの量や質を上げるには、どのようなことが考えられるのか。それは大人の語学学習でもあるように、自律的かつ継続的に学習に取組めるようにすることです。このような学習の下支えをするのが、やはり、モチベーションです。小学生の英語学習に対するモチベーションを高めるには、まずは、英語に関心や興味をもたせることが重要です。実は、そのための工夫や取組みは、すでに多くの小学校や自治体でも始まっています。

 そのひとつが、英語の授業で日本人教師を補助するALT(Assistant Language Teacher; 外国語指導助手)の採用です。政府が1987年から実施する「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)で来日したネイティブスピーカーを各地の自治体が雇用し、地域の小中高校などに派遣する取組みです。特に小学校では、物事を柔軟に受入れられる幼い頃に外国人と接することで、異文化理解の促進とともに、英語に対して関心や興味が高まるという意味で、非常に効果的と考えられます。これをきっかけに、子どもたちが授業外でも英語を話したり、自律的に学ぶようになっていくと、インプットの量が上がることも期待できます。

 しかし、すべての自治体が十分な数のネイティブスピーカーを雇用する予算があるわけではありません。そこで、地元の大学などと提携する取組みもあります。日本の大学に留学している外国人や、教職を目指す日本人の学生が地元の小学校などに出向き、ティーム・ティーチングのような形で英語の授業に関わったり、授業時間外に子どもたちと英語で遊んだり、会話する取組みです。私のゼミ生なども地元の中学校から招かれ、ボランティアでそうした活動を行っています。また、現役時代に海外赴任していたり、英語を使って仕事をしていたシニアの方々に協力してもらっている地域もあります。言語インプットを確保するために、様々な取組みがなされているのです。

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