学びを加速させるアドバイスinputとoutputの繰り返しが、新しい世界に踏み出す学びの力
教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【18】
AIについて学習する基本は、たくさんのinputとoutputを繰り返すことです。そのために私が担当するAI関連の講義では、英語の最新論文を題材にして、自分の意見を2,000文字以上のレポートにして述べる課題を複数回出しています。
もちろん生成AIでレポートをつくることは不可ですが、英語力を問うわけではありませんから、AI翻訳は使っても良いことにしています。これら課題は、人工知能や機械学習の最前線について理解を深められるきっかけになると喜ぶ声も多く、学生たちのモチベーションアップにもつながっているようです。
ただ、英語論文を訳しただけではレポートになりませんし、サマリーをつくるだけでも不十分です。題材とする論文の要旨を提示したうえで、独自の観点から自身の考えを述べることを求めています。優れたレポートを書く学生は、主題だけでなく周辺の基礎概念や重要な単語の意味も自発的に調べてまとめており、それが高い学習効果につながっているように感じます。
社会人のなかには、「自分は文系だから」とAIの学習を敬遠してしまう人もいます。しかし実際には、明治大学情報科学科でもAIを本格的に学ぶのは3年次からで、その時点では理系・文系の知識に大きな差はありません。むしろ重要なのは、社会人か学生か、理系か文系かではなく、「広く捉えて深く考える」姿勢なのです。
文系出身の社会人は、AI=数式の理解が必要といった先入観を持ちがちですが、数式を読み解けなくとも理解は可能です。私自身、学術論文を執筆する際に、難解な内容であっても数式を使わずに分かりやすく論理的に順序立てて表現・構成するようにしています。しかし、そのことが問題視されたり、数式がないと指摘されたりしたことは著名なジャーナルでも一度もありません。
社会人であれ学生であれ、偏見や苦手意識をもたず、inputとoutputを繰り返すことで理解は確実に深まります。これはAI分野に限った話ではありません。私の講義のテーマはAIですが、「自ら調べ、深掘りする力」を養うことを重視しています。未知の分野の学習も、こうした力があれば徐々に理解を深めていけます。ぜひ前向きに挑戦してみてください。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
