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主体性を育むには「何に役立つのか」のイメージが大切
2025.10.15

学びを加速させるアドバイス主体性を育むには「何に役立つのか」のイメージが大切

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【10】

学んだ内容が自分の研究や世の中にどう生かされるのか。そこを意識して主体的に取り組むかどうかで、吸収できることは大きく異なってきます。

私が大学に入った頃は、ただ漫然と授業を受け、数式を覚え、テストを受けて、単位をもらうことが多くありました。しかし研究室に入り、それまでに学んだことをいざ使うとなったとき、やっと知識と何を学んでいたのかの理解が結びついてきたのです。

一連の経験を踏まえ、自分が教育できる立場になった現在では、この数式が「何を表しているか」「何に役立つのか」を極力イメージしてもらえるよう気をつけながら授業を進めています。

たとえば材料力学の授業で学生たちは積分の計算をしますが、これを使えば、ロボットアームの先に力が加えられたとき、どれくらい変形するのかなどが算出できます。公式をただ覚え込むだけなら暗記で終わってしまいますが、それによって「何がわかるのか」がイメージできると、食いつきが良くなる学生も少なくありません。

学生には何事にも興味をもつようにしてほしいと願っています。興味をもつことで、自ら調べたり行動を起こしたりする姿勢を身につけることができ、それによって新たな興味が見つかるという、良いループが築けるはずです。教育者である私の立場からすると、学生が興味をもてるヒントを与え、興味をもてたのならすぐに動ける土台を用意しておくよう心がけています。

そもそも研究自体、受け身では進められず、自分の力で切り拓かなければなりません。必要にかられて主体的に学ぶから、自分事になるわけです。この力は、社会に出た際にも重要です。研究で困難に直面した際に、これまでの知識を活用し工夫して乗り越えるといった経験を学生たちには得てほしい。その経験を糧にして、将来活躍してもらえればと考えています。

仕事をする際も、「上司に言われたからやる」のか「自ら主体的にやる」のかで、作業内容は同じであってもモチベーションと成果が違ってくるはず。私も企業で働いていた時期がありましたが、自ら取り込んだことには、上手くいくことが多かったです。主体的になることによって、わからないことを調べたり、できないことは工夫したりと、取り組む姿勢が自然と変わっていったからです。

受け身から主体的に変わる一つのトリガーとして、「これがどう生かされるのか」「これが世の中にどう役に立つのか」という具体的なイメージを湧かせることが大切です。マネジメントをする際にも、時間のかかる長期プロジェクトであれば、大きな目標に至るまでに小さめのチェックポイントをいくつも設定し、細かく達成感を覚えるようにすれば、メンバーのテンションを上げやすいのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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