特別講義理工学部編 大学で学び、研究する宇宙~大学でJAXAやNASAと一緒に宇宙の仕組みを調べてみませんか?~

十数年前は、宇宙といえば限られた人が関わる技術・仕事だという印象でした。でも、宇宙分野の発展は目覚ましく、今では多くの人が宇宙に関わる時代になってきています。大学生が企業や研究機関等と連携して研究を行う例もあり、明治大学理工学部物理学科ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)と協力し、宇宙の謎の解明をめざした研究を進めています。今回の記事では、理工学部専任講師の佐藤寿紀先生が、主に高校生に向けて、宇宙に関わる学びや仕事について紹介した「明治大学リバティアカデミー」特別講義の内容をお伝えします。
佐藤 寿紀
明治大学理工学部専任講師
専門分野は、素粒子、原子核、宇宙線、宇宙物理に関する実験、 天文学
宇宙へのキャリアパスをひらく物理学
私は明治大学理工学部物理学科に所属し、宇宙開発と物理学を融合させた研究を行っています。物理学というと、難しくて何に役立つのかわからないという印象を持つ人も多いでしょう。でも実は、物理学の学びを活かせる分野は幅広く、宇宙分野へのキャリアの架け橋を与えてくれる学問でもあるのです。
明治大学に着任する前の数年間、私はアメリカのメリーランド州にあるNASAのゴダードスペースフライトセンターという研究所にいました。X線望遠鏡の開発を行っており、物理学の延長線上にある研究です。同じ研究グループのエンジニアを経て、女性宇宙飛行士になった人がいます。また明治大学理工学部物理学科の卒業生で、天文学分野の大学教員やNASAの研究員になった例もあります。物理学科で基礎を学び、応用する技術を身につけることで、実はさまざまな宇宙分野で活躍できるようになります。
では、宇宙と物理学はどう関わっているのでしょうか。そもそも物理学とは、自然界における物体の仕組み、性質、法則性などを明らかにする学問です。例えば、物体を斜め上方向に投げると放物線を描いて落ちますが、放物線の方程式を利用すれば、時間が経過した時に物体がどこにあるのかが予測できるわけです。ただ、高校までの物理で学ぶのは、物体の振る舞いが数学的に記述できるというところまで。現象を表す数式は学びますが、なぜそうなるのか、重力や引力とは何なのか、この世界はどのように成り立っているのかといった、その背景にある疑問、抽象的な問いには触れません。その先が物理学の面白さなのです。無限にある問いと向き合って学ぶのが大学での物理学であり、宇宙に関わる学びにもつながっていきます。
宇宙物理学における2つの学問領域
宇宙の始まりや法則について調べるのは、まさに物理学の領域です。星や銀河とは何か、ブラックホールは本当に存在するのかと、空を見上げて疑問に思ったこと、そのすべてが物理学の研究フィールドです。
宇宙物理学は、大きく分けて2つの学問分野があります。一つは宇宙論。最も有名なのはアインシュタイン方程式で、宇宙を理解するために重要な基盤となる数式です。この数式を用いて、宇宙が膨張していると人類が気づき始めたのは20世紀以降です。人類の歴史からすると、最近のことです。膨張しているのなら以前は小さかったわけで、どうやって始まって、今の宇宙があるのかを考えるのが宇宙論です。
もう一つは、天体物理です。宇宙空間は器で、その中にはいろんな物質があります。私たち人間も宇宙の中の物質の一つです。銀河には、地球のような恒星、ブラックホールや中性子星といった天体があります。銀河をたくさん集めると銀河団と呼ばれる大きな天体になりますが、そこにはダークマターという研究者もまだよくわかっていない物質で満ちていると言われています。そうした宇宙の中にある物質について調べる学問です。宇宙論と天体物理のどちらも、物理学を使って調べることができます。
大学生もJAXAやNASAで活躍中
宇宙に対して、研究者以外の方はどのような印象を持っているでしょうか。自分たちの実生活とはあまり関係がないと感じている人も多いかもしれません。
しかし実際には、映画「ドリーム(Hidden Figures)」で描かれていたように、多様な人たちが宇宙分野の仕事に関わっているのです。今後はますます、いろんな能力を持つ人が参入していく分野になっていくでしょう。
JAXAが示す宇宙探査分野のロードマップでは、20年後には月を周回する軌道上で100名規模が利用できる宇宙観光や、月面では有人科学探査が始まって資源利用を進めていくといった未来が描かれています。今の高校生が40歳前後となり、社会で中心的に活躍する頃の話です。日本に限らず、世界中で多くの人が宇宙を舞台に活躍する時代が訪れると考えています。
現在すでに、JAXAやNASAは大学と密接に連携し、学生が研究に参加しています。私の研究室の学生も今、JAXA宇宙科学研究所との共同研究という形で実験を行っており、日常的に研究所に出入りして実験装置を使わせてもらっています。宇宙環境を再現した真空の窯の中に自分が作ったものを入れ、性能評価するという開発分野の実験を行っています。また、来年には研究室の学生がNASAに長期滞在して研究する計画を進めています。このように大学は、世界トップの研究者と肩を並べて研究できる可能性を開く場所であり、JAXAやNASAも決して遠い存在ではないのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。