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出会うことからすべてが始まる ―現代版ツーリズムのススメ―

佐藤 郁 佐藤 郁 明治大学 国際日本学部 専任講師

観光に魅せられて

佐藤郁専任講師 私はもともと大学を卒業して、旅行業に身をおいていた。そこで旅行企画を取りまとめているうちに、“観光が与える影響の広さ”に関心が高まり、専門的に勉強しようと大学院の門をたたいた。
 観光業は、多くのステークホルダー(利害関係者)によって形成されている。そこにネットワークが生まれ、別の産業、分野への波及効果も高い。観光の持つ力は、経済のみならず、文化、社会、環境にも及ぶ。現代では、観光を通じて地域の結束を図る地域政策の中に位置付けられたり、貧困などのグローバル・イシュー(国際的な問題)を解く糸口としても注目されている。
 ここに、ツーリズムの可能性について、広く提起したい。

ツーリズムとは何か

 今日ではごく一般的に使われる「観光」という言葉は、元は中国の『易経』にある「観国之光(国の光を観る)」からとされ、ツーリズム(tourism)の訳語として用いられるようになったのは大正時代からといわれる。今日の日本では、観光業、旅行業、観光旅行、観光事業などを表す。一方、英語のtourismはラテン語の「ろくろ」を語源にもち、回遊・周遊することを意味し、ビジネスや勉学、交流などその他の目的の移動も含むより広い概念である。
 世界各地には古くから巡礼の旅があり、日本でも四国八十八か所巡り、熊野詣で、お伊勢参りなどの宗教的な旅があった。しかし、これらは商売としての面は強く意識されてはいなかった。
 楽しみとしての旅、あちこち見物して回る旅が本格的に登場してくるのは、19世紀に入ったヨーロッパでのことで、中でもイギリスのトーマス・クックが旅行(代理店)業を始めたことで、近代産業としての観光業が成立したと考えられている。これには産業革命によって生活水準が上がり、鉄道や道路、宿泊施設などが整備されてくると、上流階級を中心に世界の各地に旅行することが一種の流行になっていった背景がある。
 やがて交通手段や観光関連産業が盛んになってくると、庶民の間でも観光への関心が高まっていく。第二次世界大戦後は、「マス・ツーリズム」と呼ばれる格安の定型化された団体旅行が人気を博し、観光産業が大きく発展していく要因になる。欧米では第二次世界大戦後まもなくその時代がやってくるが、日本では高度経済成長を背景に海外観光への関心が高まり、パッケージツアーの商品が企画されるようになる。こうした営利中心の観光とは別に、様々な理由で旅行の機会に恵まれない人々に対して、政府や公共機関が広く観光旅行に参加しやすくするための条件整備を行う「ソーシャルツーリズム(Social Tourism)」というものも誕生してくる。

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