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留学中に向き合った「自分の中の多様性」
2025.08.06

人生のターニングポイント留学中に向き合った「自分の中の多様性」

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【115】

私に大きな影響を与えた経験の一つは、やはり留学体験です。

学部1年生と博士課程の4年間、アメリカに留学しました。しかし、最初は言葉の壁に悩み、ディスカッションやチームプロジェクトで思うように力を発揮できず、悔しい思いをすることがありました。まるで自分が「invisible」(周りから見えない存在)になったように感じ、落ち込むことも多々ありました。

このようなマイノリティとしての経験が、今の私の仕事、つまり1人1人が安心して活躍できるチームや社会を目指す研究や実践の原動力となっています。

さらに、留学中に自分自身と深く向き合う機会がありました。自信を失っている自分、後ろ向きな自分、恥ずかしさを感じる自分、逃げ出したくなる自分——こうした「内なる多様性」を受け入れる努力をしました。そして、友人や指導教員が私の持ち味を見つけてくれ、それを伝えてもらえたことが、大きなブレイクスルーにつながりました。

特に印象に残っているのは、ゼミの先生との会話です。私は「貢献できず、うまく話せなくて悩んでいます」と正直に打ち明けました。すると先生は「それは重要なことだから、次のゼミでその気持ちを話してみてはどうか」と提案してくれました。

勇気を出してゼミで自分の気持ちをシェアすると、クラスメイトも共感してくれ、「アメリカ人の僕でもそう感じることがある」と言ってくれたり、「もう少しゆっくり話してみよう」と提案してくれたりしました。その結果、グループ全体のコミュニケーションが改善され、みんなにとって話しやすい環境が作られたように感じました。

私にとって、意見をうまく言えないことは「弱み」だと考えていましたが、それを共有することでチーム全体に良い影響を与えられたと実感しています。

こうした経験から、Diversity & Inclusionを考える際に、外側に見える多様性だけでなく、自分の中にある多様性を受け入れ、自分自身のさまざまな持ち味を見つけることの重要性に気付きました。この考え方は、現在の私のインクルーシブ・リーダーシップや多文化共修の研究にも深く息づいています。

ビジネスパーソンの方々も、仕事や人間関係でつまずいたとき、「自分はダメだ」と自己批評してしまうことがあるでしょう。しかし、それは目指すものがある裏返しであったり、あるいは「少し休んだほうが良い」というサインかもしれません。

大切なのは、自分の中にさまざまな思いを受け入れるスペースを持つことです。自分の中の多様な部分をないがしろにせず、それぞれを大事にしてほしいと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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