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2025.12.11

生成AI、ゲームAI……、進化するAIは人間の味方か、それとも脅威か?

生成AI、ゲームAI……、進化するAIは人間の味方か、それとも脅威か?
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AIの技術が高まり、社会に広く普及したことで、私たちとAIの関係性や使い方も変わってきています。情報の集め方、ゲームや教育との関わり方、さらには創作のあり方まで、AIはあらゆる場面で人間と関係を築き始めているのです。しかしその裏には、さまざまな課題も横たわっています。

信頼と活用の境界線が課題となっている、対話型AI時代

横山 大作 近年、AIの性能が飛躍的に向上し、情報収集のあり方にも変化が生まれています。これまでなら何かを調べたいときはGoogleなどの検索エンジンを使うのが当たり前でしたが、今ではChatGPTのような生成AIに尋ねる人も増えてきました。

 しかし、「AIがこう言っているから正しい」と考えるのは誤りです。ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、全知全能の存在ではなく、「あらゆる分野における平均的な言説をうまく再構成する」力に長けているに過ぎません。そのため事実の確認や複雑な推論、新規性の高いアイデアの創出といった用途には向いていません。特定の事実を尋ねたり、何段階にもわたる思考の過程を必要とする問題を解かせたりするのは、LLMの構造上、現段階では困難です。

 生成AIの進化は、教育現場にも大きな影響を与えています。我々教育者にとって厄介なのは、生成された文章があまりに自然で流暢なことです。以前であれば、検索した内容のコピペがバレるようなケースが多くありましたが、現在では「自分で考えて書いた」と言われても判断がつきにくくなっています。学生が本当に理解しているかを測るのが非常に難しくなっているのです。

 また、アメリカではAIによるフェイクニュースが出回り、社会問題にもなっています。公的機関により出されたレポートが、存在しない参考文献を引用したケースもありました。

 生成AIは、「こういう話が来たらこう返す」という形式で応答を構成していて、発話に真偽の判断が組み込まれているわけではありません。つまり、「世の中の一般的な話の流れ」をなぞっているにすぎず、人間のように信念をもって発言しているわけではないのです。

 人間は自然で説得力のある話し方に弱いようで、これが生成AIの回答を無批判に受け入れてしまう一因なのかもしれません。自分が「流暢さ」と「信頼性」を混同していないか、気を付けてみる必要があるのではないでしょうか。

 もちろん、AIがもたらす恩恵も多大なるものです。たとえば「こうするのが普通だよね」「このやり方が定石だよね」といった判断に関しては、AIはかなりの精度で助言できるようになっています。日常生活や仕事のなかで、ちょっとした判断を助けてくれる存在としての可能性は大いにあります。

 最近では「AIエージェント」と呼ばれる新たな活用形態も注目を集めています。これは、旅行の計画に合わせて飛行機やホテルを手配したり、ユーザーの要望に応じた資料を探して要点をまとめたりするような、高度な作業をこなせるシステムです。「AIが仕事を細かく分解し、それぞれの業務に必要な作業を代替しながら、全体としてユーザーの業務を支援する」ことができるようになってきたのです。

 AIは今や単なる検索や補助ツールにとどまらず、人間社会のさまざまな場面に深く入り込んでいます。その一方で、AIの出す答えを安易に信用するのではなく、その仕組みや限界を理解した上で、適切に使いこなしていく姿勢がますます求められているのです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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