2024.03.21
- 2016年6月2日
- IT・科学
人工知能がマーケティングを進化させる
高木 友博 明治大学 理工学部 教授「ビッグデータ」という言葉を覚えているでしょうか。2010年代に入った頃、メディアなどで盛んに取上げられましたが、最近はあまり耳にすることがなくなりました。実際には、多様なウェブサービスの活用が進むとともに、ビッグデータはますます巨大化しており、様々な分野で活用されています。ここでは、機械学習が手法として使われており、人工知能の一分野です。しかし、これは本来の人工知能の可能性のほんの一部にすぎません。
より効果的なマーケティングのために期待される人工知能
最近マーケティングはデータドリブン化し、大きな変貌を遂げつつあります。マーケティングというと、セールスマーケティングをイメージする人が多いと思いますが、本来はもっと広義な企業活動を意味しており、顧客が本当に求めている商品やサービスを作り、その情報を発信し、顧客がその商品やサービスの価値を知り、得ることができるようにするための活動のことです。そこでは集積したデータをマーケターが統計解析ツールなどを使ってグラフを作り分析します。なぜ、データをグラフ化するかといえば、マーケティングの施策を考えるのは人なので、データの視覚化や関係者たちとの共有が必要だからです。つまり、データ処理の基本的な部分を機械にやらせ、その上の創造的な部分を人がやるという構造です。
しかし、収集するデータ量が比較的少なく、情報発信の対象がマス(大衆)であり、広告媒体がテレビや新聞、雑誌が中心であった時代はそれで良かったのですが、より効果的なマーケティングが求められていくのにともない、訴求対象はマスから個々人へと細分化されるようになりました。訴求対象を絞り込み、個々に応じた情報を発信していくことがより効果的だからです。例えば、ウェブサイトで何か見ていると、その人の興味にあった商品や広告が出てきます。誰に対しても同じものを見せてセールスするよりも、相手に応じて訴求しやすいものを見せて購買に結びつける方が効果的だからです。
こうした個別の情報発信によるマーケティングが注目される背景には、テレビや新聞など従来の広告媒体ではやりたくても難しかったのに対し、それが可能なウェブが発展したことがあります。顧客は多くの足跡をウェブ上に残すようになり、その大量なデータがビジネスに生かされるようになっています。例えばエレクトロニックコマースにおけるレコメンド、ウェブの閲覧に従って表示されるオンライン広告などがそれにあたります。そしてそこでは、超大量のデータがリアルタイムで処理され、高度に最適化されていますが、知能化と言う意味では、まだこれからの段階にあります。