
2022.07.07
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
現在、様々な分野で人工知能の開発が進んでいます。囲碁のトップ棋士が人工知能に負けたことはニュースにもなりました。もう少ししたら、人工知能を積んだロボットが反乱を起こし、人間は征服されてしまうのではないかなどともいわれています。しかし、人工知能を研究する私から見ると、そんなことはあり得ません。人間はそれほど頭が良いのです。人は日常の何気ない会話でも、柔軟かつ適切な情報処理を瞬時に行っています。実は、それはとても難しい作業であり、人工知能はまだまだそのレベルに達していませんし、今後も非常に困難です。
人工知能のメリットは、知的であっても人にとって手間のかかるレベルの事を効率的にこなすことです。膨大なデータを的確に処理し、そこから最適な結果をスピーディーに計算することはそのひとつです。マーケティングの分野において人工知能への期待が高まったのも、ビッグデータといわれる膨大な情報をより有効に活用するためです。しかし、自分の足跡である情報を基にして自分用にカスタマイズされた広告が送られてくるのは、プライバシーが見透かされているようで怖いといわれることがあります。しかし、情報を扱っている側の業界人や私たちは、どこまでなら個人のプライバシーに触れても大丈夫なのか、非常に気を使っています。また、私たちが作っている広告は、怖がられたり気持ち悪がられたりすれば、その時点で広告としての価値はなくなってしまいます。ユーザーにとっては不必要な広告が多い中で、より有益な情報を提供する広告を私たちは目指しています。さらには、その考えは広告に限らず、マーケティング全般にいえることです。ユーザーにとって、うれしいマーケティング、有益なマーケティングを提供する人工知能が、私たちにとっての理想です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。