明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

人工知能がマーケティングを進化させる

明治大学 理工学部 教授  高木 友博

ますます広がる人工知能の応用

 ところでこれらは、マーケティング全体から見ると、そのごく一部であるプロモーションの域をでません。それ以外の多くのマーケティング領域は、いまだにアンケートを取ったりそれらを集計したりという時間のかかる従来方式が主流で、リアルタイムなデータドリブンにはなっていません。膨大なデータを従来のようなデータ処理でグラフ化し、それを基に人が個別の訴求対象ごとのマーケティングを考えるため、ものすごい労力と時間がかかっています。当然リアルタイムな処理は不可能です。POSやその他のオンラインデータを使ったマーケティングも一部では行われていますが、上記のようなリアルタイムで行われるシステムに比べると、データ活用がかなり遅れているように思われますし、ましてや自動的な知的処理は行われていません。

 つまり現状のマーケティングにおいては、まだデータが有効活用されているのは下層の一部であり、上層の試行錯誤によりマーケティングアクションを発想していく部分はまだまだ人に委ねられています。その知的なレベルに踏み込んだ機能を提供するのが、人工知能の本来の役割だと私は考えています。

 例えば、私の研究室では、この人が試行錯誤で行う知的な部分を、機械に置き換える試みを行っています。ユーザーに応じて画面の広告がリアルタイムに差替えられるのは、多くの人が体験していることと思います。この精度を上げるとともに、同じ商品でも相手によってより最適な広告表現に変えていくことができるシステムを、私たちの研究室はウェブ広告企業と産学で共同研究しています。訴求対象に応じてフィットする広告文章を自動生成し、マッチング精度の高い最適な配信を行うことを目指しています。

 10億人がウェブ上に残した様々な足跡を情報として取得したとします。このデータを基に、どのポジションに商品を投入すればヒットするのかを自動計算するシステムの開発を、私の研究室では行っています。こうしたシステムによれば、従来は性別や年齢別のように感覚的で大雑把に得られるセグメントよりも、有力顧客を最もきれいにセグメントするのはどういった属性であるのか明確にでき(性別や年齢別よりも、特定のキャンペーンに飛びつくことが重要、など)、それに従って最適なセグメントに、よりニーズの高い商品を投下することができます。すると、最適な広告やプロモーションも自動で計算できます。つまり、ユーザーの購買行動を分析し自動計算すれば、広告だけでなく、消費者のセグメンテーションから商品開発、プロモーションなど、すべてのマーケティング活動が連動してつながり、データドリブンに最適化されるようになるのです。さらに、このような試みを、いろいろなマーケティング要素に広げています。マーケターが感覚や知的活動で行っている運用や判断を、どんどん機械に置き換えていこうというわけです。

IT・科学の関連記事

インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

2020.6.17

インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 特任教授
  • 小林 良樹
画像処理技術は、より安全と公平を社会にもたらす

2020.4.22

画像処理技術は、より安全と公平を社会にもたらす

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 宮本 龍介
がんの検査だけじゃない! ヒ素を無毒化する線虫にも注目!

2020.3.4

がんの検査だけじゃない! ヒ素を無毒化する線虫にも注目!

  • 明治大学 農学部 専任講師
      科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任)
  • 新屋 良治
人型ロボット、ヒューマノイドが私たちを救う!!

2020.2.19

人型ロボット、ヒューマノイドが私たちを救う!!

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 橋本 健二

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.07.01

「経営を見える化」する力が「ビジネス」を変える

2020.06.24

子どもの権利を見落とす/教師の権利も見落とされる「ブラック」な学校

2020.06.17

インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

2020.06.10

書店が本の価格を決めたら、本はもっと売れる!?

2020.06.03

移民を引き寄せるアメリカの魅力が、日本にはあるか

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

3

2020.07.01

「経営を見える化」する力が「ビジネス」を変える

4

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム