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使えないロボットはもういらない。できるロボットを世に送り出す

黒田 洋司 黒田 洋司 明治大学 理工学部 教授

最近、ホテルの受付をするロボットや家庭用の人型ロボットが話題になっています。そうした報道などを目にすると、日本のロボット技術は世界をリードしているように思えます。しかし、実態はまったく逆だといいます。日本のロボット開発は圧倒的に遅れているというのです。

ロボットを特別視し、開発が遅れた日本

黒田洋司 ロボット開発においては、海外、特にアメリカが圧倒的に進んでいて、日本は相当遅れています。その理由はいくつかありますが、まず、アメリカは軍事目的で開発していることです。例えば、「ドローン」というと、日本ではヘリコプタータイプのラジコンを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、海外で「ドローン」というと、無人航空機のことで、敵地を偵察する軍用機なのです。おそらく、世界中で1万機を超える機体が実用されていると思います。特にアメリカでは、有人の戦闘機を開発しようとすると、議会に有人機でなければならない理由書を提出しなければなりません。人命(アメリカ兵)を危険にさらさないことが大前提だからです。そのため無人航空機の開発は進み、1機あたり数千万円から数億円するものが1万機も作られているのです。「ドローン」という航空機ロボットだけでも、巨大なマーケットを形成しているのです。

 それに比べて日本はどうか。基本的には、工場内のいわゆる産業用ロボットにとどまっていて、一般社会で実用的なロボットはほとんどありません。それは、日本ではロボットを非常に特別視しているからです。何かに役立てようとするのではなく、ロボットそのものに価値があると思っています。そこで、コミュニケーション機能を備えた人型ロボットなどに注目するのです。ところが、そうして開発されたロボットのインタラクティビティ(双方向)やコミュニケーション機能は、正直、まだまだ実用レベルではありません。だから、話題になってもマーケットにならないのです。世界では、ロボットは何らかの作業をする道具と捉えられています。つまり、工業製品であり、役立つことに価値があるのです。世界から見ると、日本のロボットに対する考え方だけが特殊です。

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