明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

人の心を理解できないロボットは、人に対して脅威となる!?

明治大学 理工学部 教授 武野 純一

近年、ロボットの研究開発は、様々な方向からアプローチされ、急激に進んでいます。その中で、「人の心をもつロボット」の研究を行っているのが、本学理工学部の武野教授です。その研究は海外のメディアにも度々取上げられるなど、世界中から注目されています。

人の心をもったロボットに世界が注目し始めた

武野 純一 私がロボットの研究を始めたのは1980年頃です。マイコンと呼ばれ、机の上に置くことができるほどのコンピュータが現れ始めた頃です。ロボットの目にあたるカメラの開発を進めていた私は、不意に、「ロボットは“見て”いるのか」という疑問を覚えました。確かに、ロボットは障害物をカメラからの情報で確認し、避けて移動するようになりました。でも、それは“見る”ということなのか。では、人が行っている“見る”とは、どういうことなのか。このとき、人の意識の重要性に気がついた私は、その人の意識を組み込んだロボットを作ることを考えるようになりました。しかし、人間の知能を超える人工知能の開発が熱を帯びていた当時、私のような考えをもつ人はだれもいませんでした。私の研究は、無視をされたり、批判や非難を受けることもありました。しかし、2004年、「ロボットによる鏡像認知」の実験を発表すると、アメリカのディスカバリー・チャンネルで取上げられ、ロイター通信やAP通信が報道したことにより、ドイツの科学番組「プラネトピア」や日本のTV番組でも取上げられるなど、世界中のマスメディアから注目されるようになりました。

 なぜ注目されるようになったのか。その大きな理由は、現代のAI技術やロボット技術ならば、知能でもパワーでも、人の能力をはるかにしのぐスーパーロボットがいつできても不思議ではないからです。いま私たちは、そのAIの高度な計算が正しいのかどうか、理解することもできない時代に入っているのです。すると、人はどうなるのか。AIの計算による“合理的”な判断によって、人が排除される可能性もあるかもしれません。先日、ドイツの全国紙「フランクフルター・アルメガイネ」の取材を受けましたが、彼らも、ロボットは私たちにとって脅威となるかもしれないという危惧を抱いていました。ならば、ロボットに、人に危害を加えないとか、これはしてはダメ、これはして良いというプログラムを設定すれば良いのではないか。しかし、それではロボットは柔軟な対応ができず、人にとって単なる高性能な機械のままです。人のパートナーとなるような存在にするには、やはり、「人の心をもったロボット」を作らなくてはならないのです。世界中のメディアが私の研究に注目するのは、彼らも、それを感じているからではないかと思います。

IT・科学の関連記事

人工知能を作ることから始まる現代のものづくり

2020.8.26

人工知能を作ることから始まる現代のものづくり

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 金子 弘昌
便利なロボットは人の不便から生まれる

2020.8.19

便利なロボットは人の不便から生まれる

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 加藤 恵輔 
人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

2020.7.15

人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

  • 明治大学 総合数理学部 教授
  • 小松 孝徳
インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

2020.6.17

インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 特任教授
  • 小林 良樹

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.09.23

コロナ渦を都市政策の歴史的な転換点に

2020.09.16

これからは内部通報を促す企業が力をつける

2020.09.09

土壌は資源であり、持続的な活用のためには知恵が必要

2020.09.02

データサイエンティストにとって、データ分析は結論ではない

2020.08.26

人工知能を作ることから始まる現代のものづくり

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

3

2020.09.23

コロナ渦を都市政策の歴史的な転換点に

4

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

5

2020.09.16

これからは内部通報を促す企業が力をつける

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム