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生物化学は、「より良く生きるための医療」に貢献する

明治大学 理工学部 准教授 本田 みちよ

近年、医療技術の進展はめざましいものがあります。そのなかでも、iPS細胞移植やゲノム編集技術、そして、がんの検査や治療法の開発、大きな力の一端となっているのが生物化学です。本学にも、「生物化学の観点から医療に貢献する」ことを目的とした研究チームがあります。

高齢者の健康寿命を高める、骨粗鬆症対策の取り組み

本田 みちよ 生物化学は、様々な生命現象について「なぜ、そういうことが起こるのか」ということを化学的な手法で掘り下げていく学問で、多くの基礎研究が行われています。基礎研究により明らかにした事象を応用して、社会に還元することを私たち応用化学科は目指しています。

 そのなかで、近年、力を入れているのが、高齢化にともなう様々な疾患に対する取り組みです。そのひとつに、骨粗鬆症があります。

 骨は白くて硬く、体内である大きさになれば、ずっとそのままでいると思われがちですが、実は、壊し、つくる、という新陳代謝をずっと行っています。

 このサイクルを担っているのが、古くなった骨組織を吸収する破骨細胞と、新たな骨組織を形成する骨芽細胞で、この仕組みをリモデリングと言います。

 人は、成長期までは骨の形成が進み、だいたい20歳くらいを過ぎると、壊すとつくる量が同一で推移します。

 ところが、加齢とともに骨組織をつくるスピードが落ちてきて、壊す量とのバランスが崩れてしまうのです。その結果、骨はもろくなり、骨折などが起きやすくなってしまうわけです。

 そこで、最近は、破骨細胞に対して抑制をかける治療薬がたくさん開発されています。例えば、破骨細胞の活性化を抑えたり、破骨細胞自体の数を減らすというアプローチです。

 一方で、つくる機能も活性化させることができないか、という取り組みを私たちは行っています。

 そのなかで、いま、注目しているのが亜鉛イオンです。この亜鉛イオンは、骨組織の吸収を抑制するとともに、骨組織の形成を活性化させる効果があると考えられています。

 そこで、例えば、骨折した場合に、人工骨を埋入して生体の骨を補う治療がありますが、その人工骨の素材に亜鉛イオンを含ませることで、骨の細胞に働きかけるというアプローチを考えています。

 こういう働きかけによってでも、活性化した細胞は周りの細胞も活性化させるような因子をもっているので、この機能が働けば、骨折の治りが早くなったり、骨がもろくなることも抑えられるのではないかと考えています。

 高齢者にとって、骨折は、もちろん、それ自体がリスキーなことですが、さらに問題なのは、例えば、脚の骨折などで長期間動けなくなることによって、身体全体の骨の脆弱化が進んだり、認知症が始まったりしてしまうような、負のサイクルに陥ってしまうことです。

 運動が筋肉に良いことは皆さんご存じだと思いますが、骨の健康にとっても、適度な負荷をかけることは、とても重要なのです。

 長寿は、もちろん、とても喜ばしいことですが、大切なのは、健康寿命です。自由に動け、元気でいられるということが、楽しく生きるという質の高さに繋がります。

 その意味で、骨粗鬆症対策は重要な課題だと考えています。

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