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生物化学は、「より良く生きるための医療」に貢献する

本田 みちよ 本田 みちよ 明治大学 理工学部 准教授

がんに罹っても、より良く生きられる治療を目指す

本田 みちよ がんは、検査技術の向上や、様々な治療方法の開発があり、早期発見、完治も可能な疾患になってきていますが、高齢者にとっては、やはり、重大な疾患です。

 そもそも、がんは、なんらかの原因でDNAに傷がつき、正常な複製に失敗して変異した細胞が生まれることで始まります。これをイニシエーションと言いますが、実は、そうした変異は、私たちの身体の中ではよく起きています。

 だからといって、それが、すべてがんになるわけではありません。人の身体には、変異した細胞を排除する機能、いわゆる免疫機能があるからです。

 例えば、変異した細胞が自殺するかのように自然に消滅するように導く、アポトーシスといわれる現象などがあります。

 ところが、変異した細胞の中には、そうした免疫機構をストップさせ、逃避するものがいるのです。

 すると、その細胞によって、変異した細胞の複製が加速されます。それをプロモーションと言い、それが進行すると、正常な細胞の働きが阻害され、がんが進行することになってしまいます。

 人が長寿になるほど、そうしたリスクは高まります。

 今年の6月から、遺伝子検査が保険適用となりました。これは、がんになるときに関わってくるような遺伝子がある程度リストアップされているので、そこに変異がないか、検査する方法です。

 問題は、検査によってがんのリスクがあることがわかった場合、どのような治療をしたら良いのかということです。

 以前、乳がんのリスクが高いことを知って、事前に、外科的に切除したアメリカの女優さんがいましたが、そうした治療が、だれにとっても最良の選択であるというわけではありません。

 そこで、新たな抗がん剤などの開発や、免疫力を高める技術が求められます。生化学はそうした分野にも応用されています。

 例えば、近年、注目されている「ゲノム編集」もそのひとつです。これは、遺伝子の特定の領域だけを改変させて、がんなどの疾患のリスクを減らす技術です。

 倫理上の問題や安全性など、クリアすべき問題はありますが、こうしたアプローチも進められています。

 がんも、少しでも長く生きられれば良いという治療から、より良く生きるための治療が目指される疾患になっています。

 その意味では、患者さん一人ひとりが、自分に適した治療法を選択できたり、様々な治療法を複合的に取り入れられることが良いと思います。

 私たちが取り組んでいる生化学は、そうした医療に貢献する材料をたくさん提供できるし、提供しなくてはいけないと思っています。

 世の中に還元できる研究のために、私たちは学内の研究室に閉じこもるのではなく、医師や医療関係の企業の人たちとも組み、共同研究を進めています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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