明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

共感を得るのは身体表現をともなったコミュニケーション

嶋田 総太郎 嶋田 総太郎 明治大学 理工学部 教授

近年、居ながらにして様々な情報をリアルに体験できるヴァーチャルリアリティ(VR)の技術を活用したサービスが、様々な業界において開発されています。このVRの発展を支えている研究分野のひとつに、認知脳科学があります。脳の情報処理を解明していく研究は、VRにとどまらず、人間の社会性や、人間そのものの解明につながっていくといいます。

「認知脳科学研究室」のキーワードは「身体」

嶋田 総太郎 人は、視覚や触覚など様々な入力情報をどのように処理し、思考や行動につなげていくのかを研究する学問分野として、認知科学があります。そこには、心理学や哲学をはじめ、言語学、文化人類学、情報科学、コンピュータ科学、AI(人工知能)など、様々な研究分野が関わってきます。その中に、認知脳科学もあります。認知脳科学とは、脳の情報処理という観点から、人間を理解しようとする学問分野なのです。
 脳の研究というと、思考や意識を中心としたものと思われがちですが、実は、私の「認知脳科学研究室」の研究テーマの大きなキーワードは、「身体」です。そもそも、脳に入ってくる情報は身体によって感知されたものであり、それを脳が情報処理し、環境に働きかけるために指令を出すのも身体に対してです。そういった意味では、脳の活動にとって身体は欠かせないものですが、それだけでなく、脳が環境を認知し、判断する機能そのものに、身体は大きく関わっていると考えます。例えば、コンピュータであれば、同じ情報を入力すると、同じ答えが返ってきます。しかし、人の場合、同じ情報でも、健康なときと身体の具合が悪いときでは、答え、つまり脳の判断は変わります。また、身体形状が小さい幼児期と、大きい青年期でも、環境の認識の仕方は変わってきます。つまり、人にとって身体とは、コンピュータにおける単純な入力装置とは異なり、脳の機能そのものの根っこにあるものと考えられます。脳による認識とは、知覚による情報のみで行われるのではなく、環境への働きかけである身体の運動の情報がともなって行われるのであり、脳の認識と身体の運動は、いわばループ構造になっているといえます。

IT・科学の関連記事

アインシュタインはいかにしてアインシュタインになったのか

2022.6.17

アインシュタインはいかにしてアインシュタインになったのか

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 稲葉 肇
民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

2022.5.25

民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 栁川 鋭士
日本の折紙が世界にイノベーションを起こす

2022.4.20

日本の折紙が世界にイノベーションを起こす

  • 明治大学 研究・知財戦略機構 研究特別教授
  • 萩原 一郎
あなたが見てるものは、実際のものではなく、錯視かもしれない

2022.4.6

あなたが見てるものは、実際のものではなく、錯視かもしれない

  • 明治大学 研究・知財戦略機構 先端数理科学インスティテュート 研究特別教授
  • 杉原 厚吉
ダークウェブで暗号資産が通貨になっている理由を考えると…

2022.3.18

ダークウェブで暗号資産が通貨になっている理由を考えると…

  • 明治大学 商学部 准教授
  • 土屋 陽一

新着記事

2022.07.06

補助金を巡る意識改革が必要

2022.07.04

スマート社会の実現を私たちも考えよう

2022.06.28

コミュニケーションを第一に、家族を大切にしよう

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

2022.06.21

地道でも “源”から、理解するようにしよう

人気記事ランキング

1

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

4

2022.07.06

補助金を巡る意識改革が必要

5

2018.01.26

#3 日本国憲法は「押しつけられた憲法」か?

連載記事