明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

共感を得るのは身体表現をともなったコミュニケーション

嶋田 総太郎 嶋田 総太郎 明治大学 理工学部 教授

脳の自己身体イメージを錯覚させる実験

 脳の中には自分の身体についてのある種のイメージがあると考えられます。その形成メカニズムを調べるために、「ラバーハンド錯覚」という実験があります。ここでは、被験者自身の手と、マネキン人形の手のようなラバーハンドを並べ、被験者からは自分の手は見えないようにしておきます。その状態で、実際の手とラバーハンドの同じ部分をブラシなどで同時に撫でていると、被験者は、ラバーハンドは作り物だとわかっていながら、徐々に、ラバーハンドが自分の手のように感じられる錯覚が起こるのです。これは、視覚と触覚が一致することによって起こる現象です。そこで、実際の手とラバーハンドを撫でるタイミングを変えていくと、300ミリ秒(約1/3秒)ほどのずれが出ると、錯覚が起こりにくくなることがわかりました。実は、視覚情報は脳の後頭葉に集められ、触覚情報は頭頂葉に集められるのですが、その後、それらの入力信号は脳の中で合流します。そのとき、300ミリ秒以内のずれであれば脳は吸収し、視覚情報と触覚情報は一致していると判断するわけです。つまり、脳には自己身体イメージを形成するメカニズムがあり、五感から入る情報に多少の時間的ずれがあっても、そのイメージは保たれるということです。この脳の機能を応用すれば、例えば、データグローブとヘッドマウントディスプレイを使ったVRで自分のキャラクターを動かすとき、自分の動きとキャラクターの動きのずれの許容範囲を計算することができます。また、近い将来、このときの脳の活動やその情報処理を解き明かすことができれば、脳の指令によって機械を動かすブレイン・マシンインタフェースの技術を向上させ、例えば、思った通りに義手を動かしたり、車椅子を自由に動かすなど、医療や福祉の分野への利用が可能になってくると考えます。

IT・科学の関連記事

健康的な長寿のために、新たな機能性物質を見つける

2022.7.15

健康的な長寿のために、新たな機能性物質を見つける

  • 明治大学 農学部 教授
  • 浜本 牧子
数理モデルは近未来のスマート農業も実現する

2022.7.13

数理モデルは近未来のスマート農業も実現する

  • 明治大学 総合数理学部 教授
  • 中村 和幸
アインシュタインはいかにしてアインシュタインになったのか

2022.6.17

アインシュタインはいかにしてアインシュタインになったのか

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 稲葉 肇
民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

2022.5.25

民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 栁川 鋭士
日本の折紙が世界にイノベーションを起こす

2022.4.20

日本の折紙が世界にイノベーションを起こす

  • 明治大学 研究・知財戦略機構 研究特別教授
  • 萩原 一郎

新着記事

2022.08.09

自分を活かせるライフワークを見つけよう

2022.08.05

KAMの導入によって企業と環境変化が理解できる

2022.08.01

ボルボ・カー・ジャパンのトップと語る 自動車業界の未来とブランディングの重要性

2022.07.28

自由に取り組んで、自ら学ぶ力を得よう

2022.07.27

幕末のパンデミックを日本人はどう乗り越えたのか

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2018.11.06

#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?

3

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

4

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

5

2021.11.26

インドから始まるイノベーションは、カオスから始まっている

連載記事