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高級熟成肉を身近なものにする!? 産学共同開発の「発酵熟成肉」

村上 周一郎 村上 周一郎 明治大学 農学部 教授

最近、「発酵熟成肉」が話題になっています。実は、本学農学部の村上研究室と食肉企業のコラボによって生まれた、新しい熟成方法による肉です。消費者にとっても、食肉企業にとってもメリットがあるというその新しい熟成方法とは、どのようなものなのでしょう。

熟成肉を作るには、ドライエイジングとウェットエイジングがある

村上 周一郎 普段、私たちがよく耳にする「熟成肉」とは、どのような肉なのかご存じでしょうか。普通の肉よりも高級なイメージがありますが、実は、熟成肉に明確な定義はありません。通常、牛肉は屠殺してすぐ店頭に出ることはありません。屠殺してすぐは美味しくないからです。だいたい10日間くらい冷蔵庫に置いておきます。すると肉に旨味が出てくるのです。この屠殺後の10日間も熟成と言えば熟成ですが、この肉を熟成肉と呼ぶことはありません。スーパーなどで売られている普通の牛肉です。この10日間を過ぎて置かれる肉を、一般的に熟成肉と言います。であれば、肉はすべて、一番美味しく熟成するまで置いておけば良いと思いますが、そこには問題があります。肉を冷蔵庫にただ置いておくだけだと、20日間もすると腐敗してしまうのです。そこで、美味しい熟成肉にするために、エイジングという方法が行われます。

 エイジングには2種類あり、ひとつがドライエイジングです。ヨーロッパやアメリカでは古くから行われており、食肉業者が、大きな冷蔵倉庫にたくさんの牛肉を吊している映像などを見たことがある人も多いと思います。作る業者によりますが、だいたい2ヵ月間から3ヵ月間、肉を吊しておくと、日頃から庫内に生息する菌が肉の表面に付着してバクテリアの侵入を防ぎ、肉は腐敗することなく熟成が進むのです。この肉の表面に付着する菌にとって生育しやすく、腐敗を起こすバクテリアにとって生育しにくい環境に、庫内を保つことがドライエイジングのポイントになります。そこで、庫内の温度と湿度を保ったり、肉の表面を乾燥させるために空気が循環するシステムにしたり、扇風機で風を当てるなどの手間をかけることが必要になってきます。

 もうひとつのエイジングが、ウェットエイジングです。肉を真空パックして、微生物が一切生えないようにする方法です。これで、20日間から1ヵ月間ほど冷蔵庫で保存すると、肉は腐敗することなく熟成が進みます。日本では、このウェットエイジングが多いようです。ドライエイジングに比べて短期間で肉が熟成し、美味しくはなりますが、ドライエイジングの熟成肉のほうが香りが良く、食感も良いと言われます。最初に、熟成肉には明確な定義がないとい言いましたが、それは、熟成方法に2種類あり、また、何日間置くとか、その間どういった管理をするのかといった決まりがないからです。そのため、いろいろな熟成肉が出回ることになり、消費者が、3ヵ月間ドライエイジングした香りが良く、食感の良い熟成肉を食べようと思っても、それを判断するのは難しくなっています。

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