
学びを加速させるアドバイス自分のための継続的な学びをつくる目的意識
教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【6】
「もっと学びを深めたい」「新しい知識を身につけたい」──そう感じたときに、まず大切にしていただきたいのが「具体的な目的意識を持つこと」と「小さな成果を積み重ねていくこと」です。これは、学生でも社会人でも、学びを継続し、さらに加速させるうえでとても効果的なアプローチだと私は考えています。
「目的意識」と聞くと、10年後のキャリアビジョンや人生の大きな目標を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、そうした長期的な目的を持つことは重要です。しかし、日々の学びを習慣化し、継続するためには、もっと身近で具体的な目的意識を持つことが大切です。つまり、今取り組んでいる学習がどんな意味を持ち、何のために行うのかを意識することです。そうした小さな目的意識の積み重ねが、やがて大きな成果につながります。
たとえば、最近は「朝活」として、カフェや自宅で勉強に励む社会人の姿がよく見られます。限られた時間の中で学習を習慣化することは非常に素晴らしいことです。それに加えて、「今日の勉強は何のためなのか」「学んだことをどこでどう活かすのか」といった“学びの先”をイメージすることができれば、その時間の密度はさらに濃くなるはずです。
私自身の経験を振り返ると、学術論文を短期間で書き上げなければならないとき、「完成度の高い論文を書く」といった漠然としたゴールを追うよりも、この文章や段落で何を伝えたいのかを明確にしたうえで、タスクを細かく分けてひとつひとつアウトプットを積み重ねていく方が、結果的に質の高い論文ができると実感しています。
これは学びにおいても同様です。たとえば、ある理論を学ぶ場合でも、「なぜそれを学ぶのか」「それによって何を得たいのか」といった明確な目的意識を持つことで、その問題を解決するための知識がつながりを持って理解できるようになります。この過程が、学びを深めてくれるのです。
私は、大学の講義でもこうした意識づけを大切にしています。毎回の授業では、最初に学生に問いや疑問を投げかけ、その日の講義を通じてその問いに対する自分なりの答えを考えてもらいます。これによって、学生は講義の目的を意識しながら聴講し、受け身ではない「自分のための学び」の実現を手助けしています。
社会人の方においても、一日の学習の前に「今日は何を知りたいのか」「どんな力を身につけたいのか」といった問いを自らに投げかけてみることで、情報の受け取り方が変わり、時間の密度が高まると思います。
学生の皆さんには、ぜひ、こうした目的意識が「誰かに与えられるもの」ではなく、「自分の内側から生まれるもの」として捉えていただきたいと思います。その感覚が育まれると、大学での学びはより充実したものになるでしょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。