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腸内フローラを活用すれば、人はもっと強く美しくなる

明治大学 農学部 准教授 浅沼 成人

社会の高齢化が進むとともに人々の健康志向が高まり、様々な健康法がマスコミやネットなどで取上げられています。そのひとつに「腸内フローラ」があります。がんの治療や老化防止にも役立つといわれていますが、実は、腸内細菌の研究が進展したのはここ20年ほどのことです。何が解明され、何が研究段階なのか、冷静に確認してみましょう。

腸内に棲む細菌の数は人の全細胞数よりも多い

浅沼 成人 いわゆる腸内フローラとは、私たちの腸内に生息している細菌のことです。腸は広げるとテニスコート1.5面分ほどにもなりますが、そこに細菌がびっしりと付着していて、その数は100兆~1000兆個にもなるといわれています。人間を構成しているすべての細胞数が60兆~70兆個なので、腸内細菌はそれよりも多いのです。これほどの数の腸内細菌ですが、胎児の段階では無菌といわれています(最新の研究では異論も出ていますが)。母親の体外に出たあと、空気感染や母親との接触などを通じて菌は棲みつきはじめます。というと、汚染されていくようなイメージがありますが、むしろ、赤ちゃんが生きていくためのメカニズムのひとつといえます。例えば、コアラはユーカリを主食にしていますが、ユーカリには毒性の物質が含まれています。それをコアラの腸内細菌は分解し、栄養素として吸収できるようにしているのです。ところが、コアラの赤ちゃんも生まれたときは無菌です。でも、お母さんのお尻を舐めたり糞を食べることで、そこに含まれているお母さんの細菌を受取り、ユーカリを食べることができるようになっていくのです。人の腸内細菌の種類は、最新の研究で見直されたりしていますが、約3万種類あるといわれています。それぞれの役割や機能がすべて解明されたわけではありませんが、コアラと同じように、吸収しきれない食物の成分を分解して吸収できるようにしています。さらに、その分解して生成された物質が、人の栄養素になるだけでなく、免疫力のアップなどにつながることから、最近、特に注目されるようになったのです。

 腸内細菌については、まだ多くのことが解明されていません。研究が進まなかったのは、ほとんどの腸内細菌は、空気のない無酸素環境の腸内で生息する嫌気性生物だからです。人工的に培養することが非常に難しく、長い間、研究は進展しませんでした。その状況が変わったのは、ここ20年で遺伝子解析技術が進歩したからです。腸内細菌を培養しなくても、そのDNAを調べることで、種類や機能もわかるようになってきたのです。

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