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不妊のメカニズムを解明する新たな研究

加藤 幸雄 加藤 幸雄 明治大学 農学部 教授

ヘルペスウイルスは、唇の周辺や性器などに小さな水ぶくれを起こし、痛がゆい症状が出る病気、ヘルペスの原因となるウイルスとして知られていますが、このヘルペスウイルスが不妊の原因ともなっているのではないかという研究が進んでおり、いま注目されています。

ラットの実験で判ったヘルペスウイルスによる不妊

加藤 幸雄 人に感染するヘルペスウイルスは8種類が知られています。そのうち、単純ヘルペスウイルス1型は唇の周りや性器で発症する種類で、日本人の7~8割が感染しているのではないかといわれています。主として性器などで発症するウイルスⅡ型も、1割弱の人が感染しているといわれます。とても身近なウイルスといえます。ヘルペスウイルスに感染したからといってすぐに発症するわけではなく、このウイルスは神経節や脊髄神経に潜伏し、身体の抵抗力が衰えたときなどに発症することがわかっています。また、ヘルペスウイルス感染と不妊との関係については以前から指摘があり、研究されていますがはっきりとしたことは判っていません。

 私たちは、下垂体のホルモン遺伝子の発現制御を調べるために、ヘルペスウイルスI型のチミジンキナーゼという酵素遺伝子を利用したトランスジェニックラット(人為的に外来遺伝子を導入し発現させるようにした実験動物)を作製して実験を行っていました。このチミジンキナーゼはウイルスの遺伝子がDNAを合成するときに必要な酵素です。ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼの活性を標的にした、ウイルス感染症の治療も行われています。この動物実験を行っていると、雄のラットに不妊が多発することに気がつきました。そこで精巣を調べたところ、ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼが精巣でも発現しており、そこでは精子形成に異常が見られたのです。雌では、下垂体でしかヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼは発現していませんでした。ヘルペスウイルスは神経節や脊髄神経性に潜伏し、精巣には存在しないと考えられていたのですが、精巣の中にもヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子を働かせる仕組みが備わっていることが判ったのです。さらに研究を続けると、この酵素遺伝子が精巣で発現しているラットは、生後3ヵ月くらいから精子に異常が出始め、段々精子を形成できなくなっていくことが判りました。

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