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不妊のメカニズムを解明する新たな研究

加藤 幸雄 加藤 幸雄 明治大学 農学部 教授

不妊のメカニズム解明につながる期待も

 ラットの実験では、ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼによって精子ができなくなり、雄が不妊になることが判りましたが、人ではどうなのか判りませんでした。しかし、中国の産婦人科の医師と共同研究することができ、不妊の男性のサンプルをもらって調べたところ、ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼが精巣で発現しているケースがあることが判ってきました。しかし、ヘルペスウイルスに感染したからといって、すぐに不妊になるというわけではありません。何らかの要因でヘルペスウイルスが精巣で発現したときに、精子形成に異常が起こると考えられます。その要因が何であるのか、また、なぜヘルペスウイルス遺伝子、特にヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼが発現することで精子を作る能力がなくなってしまうのか、それは判っていません。例えば、下垂体でこの酵素遺伝子が発現しても、周りの細胞に何の変化もないのです。精子形成に影響を及ぼす原因の特定については、まだまだ研究が必要です。

 今後、この研究がさらに進展し、ヘルペスウイルスの感染が男性不妊の原因のひとつであり、その機序が判れば、診断法の開発や、治療法、治療薬の開発につながっていくと思います。また、この研究によって精子ができる仕組みの基本的なことが判れば、精子形成をより安定にする方法が開発でき、生殖能力の向上につながるかもしれません。さらに、精子形成過程で円形精子細胞においてヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼが発現すると、精子形成の異常や不全が起きるのですが、その仕組みが判れば、精子形成を完全にシャットアウトするのではなく、服用したときだけ精子形成を崩す男性避妊薬を開発することもできるかもしれません。ひとつの基礎研究の成果が、様々な形で応用につながっていくのです。

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