明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

高級熟成肉を身近なものにする!? 産学共同開発の「発酵熟成肉」

明治大学 農学部 教授 村上 周一郎

市場に出回りはじめた「発酵熟成肉」

 エイジングシートの利点は、まず、布に付いた胞子は10日ほどで肉を完全に覆い尽くすほど生育することです。その結果、3ヵ月かかっていたドライエイジングの熟成が、1ヵ月ほどで済むようになりました。また、布に付いた菌が肉を覆うことで、他の菌が生育するリスクが格段に減りました。つまり、ドライエイジングの最大の問題であった、熟成期間と安全のリスクが大幅に改善されたのです。さらに、熟成期間が短縮されたことで、削り取る肉の表面が薄くて済む、つまり歩留まりが高まるというメリットも見込まれます。

 肝心の味ですが、プロの料理人にも良い肉だとのコメントをいただきました。食品の弾力を測定できる機械で調べたところでは、最初は弾力があり、一定のところで肉の筋繊維がブチッと切れるという数値で、これは上質なドライエイジングの熟成肉と同じような食感になります。研究者である私にとっては、この数値のデータが、エイジングシートによる熟成肉の特質を一番説明しやすいと思っています。

 いま、パートナーの企業側では、「発酵熟成肉」というブランド名で販売を展開しています。いままで定義が曖昧だった熟成肉よりも、エイジングシートを使っていることが「発酵熟成肉」だという定義は、消費者にもわかりやすいと思います。2017年の秋の段階で、ファーストキッチンでは3種類の「発酵熟成肉 黒毛和牛バーガー」や、中日本エクシス株式会社が管轄する東名高速道路 港北パーキングエリア(下り)・名神高速道路 EXPASA(エクスパーサ)多賀(下り)のレストラン「近江多賀亭」では、「発酵熟成肉和牛ローストビーフ丼」や「サイコロステーキ」として商品化されています。研究の成果をこういう形で社会に還元していく営業力は、やはり企業の強みです。異分野とのコラボは、研究者にとっても興味深いものです。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

IT・科学の関連記事

画像処理技術は、より安全と公平を社会にもたらす

2020.4.22

画像処理技術は、より安全と公平を社会にもたらす

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 宮本 龍介
がんの検査だけじゃない! ヒ素を無毒化する線虫にも注目!

2020.3.4

がんの検査だけじゃない! ヒ素を無毒化する線虫にも注目!

  • 明治大学 農学部 専任講師
      科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任)
  • 新屋 良治
人型ロボット、ヒューマノイドが私たちを救う!!

2020.2.19

人型ロボット、ヒューマノイドが私たちを救う!!

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 橋本 健二
軽い!強い!錆びない!次世代構造材CFRPの用途を広げる

2020.1.22

軽い!強い!錆びない!次世代構造材CFRPの用途を広げる

  • 明治大学 理工学部 教授
  • 岩堀 豊

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.05.27

長生きリスクを、長生きハッピーにするために

2020.05.20

再生医療からアンチエイジングにも役立つ遺伝子の「付箋」とは!?

2020.05.13

より良い労働条件獲得のために、ストライキよりさらに有効なこと

2020.04.22

画像処理技術は、より安全と公平を社会にもたらす

2020.04.15

自動運転を実用化するのは新しい技術と、私たちがつくる制度

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2018.01.26

#3 日本国憲法は「押しつけられた憲法」か?

3

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

4

2018.01.19

#1 そもそも、憲法と法律はどう違うのか?

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム