明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

フランス人はなぜデモを続けるのか

川竹 英克 川竹 英克 明治大学 名誉教授(元経営学部教授)

では、日本人のデモとは…

川竹 英克 前置きをしているうちに時間がなくなってきましたが、西欧という「充実した記号」への脅迫観念の世界にむしろうんざりしながら日本にやってきたロラン・バルトは、1960年代の「全学連」のデモを見るわけです。当時の学生デモは、ちょうど中国人街のお祭りで見かける龍踊りのように蛇行する「ジグザグデモ」と言われるもので、今では交通規制が厳しくなって見られなくなりました。フランスのデモのように通りいっぱいに広がって行進するものを日本でも「フランス式デモ」と言うようですが、この「全学連」のデモを見たバルトにはやはりこれがひとつの記号に見えたわけです。

 彼によれば、西欧においてデモとは根源的な自発性と凶暴性を秘めた集団の主張の表出と考えられていますが、「全学連」のそれは整然として統率され演出され、主張というより表現、あるいはひとつの見世物のように、まるでマスゲームのように見えるというわけです。ここではシニフィエとしての主張、時にその暴力性は、それが生じる瞬間にシニフィアンとして、自己規制された記号へと絶えず収斂し消滅すると言っています。もちろん日本でもデモに伴う暴力はいつも問題になりますが、革命を何度も経験した国からすると、「全学連」の暴力的なデモも、お行儀のいいものに見えたということでしょうか。

 シニフィエを欠いたシニフィアン、空(くう)なる記号、これがこの国を満たしているのは今も昔も変わらないかも知れません。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

国際の関連記事

中華世界の拡大は、実は、理に適っていた!?

2022.11.25

中華世界の拡大は、実は、理に適っていた!?

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 西川 和孝
差別、格差、貧困の問題と、環境の問題は繋がっている

2022.11.16

差別、格差、貧困の問題と、環境の問題は繋がっている

  • 明治大学 文学部 教授
  • 寺田 良一
ウクライナ侵攻で考える、ロシアの文化とは?

2022.7.20

ウクライナ侵攻で考える、ロシアの文化とは?

  • 明治大学 文学部 専任講師
  • 伊藤 愉
日本型イノベーションは日本的両利きリーダーから生まれる

2022.6.15

日本型イノベーションは日本的両利きリーダーから生まれる

  • 明治大学 商学部 専任講師
  • 鈴木 仁里
「タイ的自由主義」がわかると、日本人もタイ人が好きになる

2022.2.25

「タイ的自由主義」がわかると、日本人もタイ人が好きになる

  • 明治大学 国際連携機構 特任准教授
  • タンシリトンチャイ ウィライラック

新着記事

2022.12.01

自分で考え、自分で動き、仕事の面白さを知ろう

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

2022.11.29

行き詰ったら、「知の総合化」で解決しよう

2022.11.25

中華世界の拡大は、実は、理に適っていた!?

2022.11.22

好奇心を尊重し、長い目で見て、人を育てよう

人気記事ランキング

1

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

3

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

4

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

5

2019.11.08

#1 日本のアニメはいつから世界で人気になったの?

連載記事