
2021年に障害者差別解消法が改正され、2024年4月から「事業者による障害のある人への合理的配慮の提供」が義務化されました。身体的な障害へのバリアフリー化が進められてきた一方で、見えにくい障害に対する取り組みは遅れているのが現状です。なかでも自閉スペクトラム症(ASD)などは、日常的な生活場面でも刺激過多と感じてしまう人が多く、感覚にやさしい社会生活環境の普及が求められています。
障害者手帳の有無を問わず、「合理的配慮の提供」が事業者の法的義務に
障害者差別解消法の改正により、それまで努力義務だった「事業者による障害のある人への合理的配慮の提供」が法的義務になりました。さらに従来は障害者手帳の交付対象によって定められていた適用範囲が、現在では障害者手帳の有無に関わらず障害や社会的障壁によって継続的に生活上の制限を受けているすべての人、精神・発達障害や難病由来の障害なども含む対象へと拡大されています。
発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションの難しさや興味・関心の偏りなどの特性が見られます。その特性は、軽度から重度まで多様な特性が連続的につながっており、症状の表れ方や程度には大きな個人差があります。そのため、診断を受けないままで困っている人もいるのが実情です。また、感覚過敏などの非定型な感覚の特性や、予期せぬ出来事に混乱しやすい傾向が見られることもあり、学校生活や外出に支障をきたす場合も多いことが知られています。
外見的にはわかりづらい障害は、ともすれば甘えやわがままだと誤解されたり、困りごとを的確に表現できず配慮を求めづらかったりするため、対応が遅れがちでした。私が専門としている「音」に関しても、大きい音が全般的に苦手な人もいれば、音の種類によって影響が異なる人、会話している相手の声を聞き分ける選択的聴取能力が乏しい人もいます。ほかにも光や匂いに過剰に反応するなど、一人ひとりの症状が実に多様で、それらへの配慮が望まれているという社会の認識も薄かったように感じます。
障害の捉え方について、障害のある人が不便を感じるのはそのような建築都市構造をつくっている社会側に責任があるとする、「障害の社会モデル」という考え方があります。それらの改善を国策や社会制度として強く進めているのが、イギリスや北欧、アメリカ、オーストラリアなどです。
日本では、2006年に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、いわゆるバリアフリー法に基づく「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」も、2025年5月に改正されました。今回の改正により、見た目には障害がわかりにくい人たちの困りごとに対応する配慮事項が追加され、翌月から施行されています。日本も海外の政策を追うような形で法整備を進め、実行しつつあるのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
