学びを加速させるアドバイス知識を必要としている人と接すること、失敗を重ねることが重要
教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【20】
学びを加速させるには、「専門知識を必要としている人と接する機会を増やす」こと、「小さい失敗を重ねる」ことが重要だと思います。
私が所属している建築分野は、学ぶべき知識が膨大で、3年次ぐらいまでは知識のインプット、教えられたことをいかに正確に身につけるかといった学習の比重が大きくなっています。しかし4年次の卒業研究では、学んだ専門知識をどうアウトプットできるかに向き合うことになります。いかに専門知識を応用して課題の解決にあたるのか、自身で考えなければなりません。この「学びの出力場面」こそが、学びを加速するターニングポイントです。
私の研究分野だと、たとえば子どもの支援に関わっている人たちが、実際困っている状況を前にして、自分の専門知識をどう活用したら改善につながるかを、調査に行くことがあります。机上の形式知だけではなく感覚的に課題を肌で感じ、課題解決を考えることで新規性が生まれます。先行研究をたくさん読んで、課題を探していくアプローチもありますが、私たちが手がける建築は、人が暮らす環境をつくるものなので、そのなかでどんな出来事が起こっていくか、しっかりつかんだうえで知識の活用を考えることで、格段に知識の理解が深まり、学びが加速されます。
実際、建築としては同じ部屋でも、使われ方でその環境の意味は大きく変わるので、現場に行きその空間を体感して、そこで日々過ごす人の話を聞くことで初めて課題を知り、学んできた知識の価値を知ることになります。「単位をとるための最少限の努力をしてきた」という学生でさえも、小学校の教育現場での課題を目の当たりにしたことで、「卒業研究では、現場での課題解決と社会的意義をもつ研究に仕上げることをめざして、最大限の努力をしたい」と語ってくれたこともあります。このような学びの加速は本人に大きな達成感をもたらしますし、教員としても大きな喜びを感じることです。
加えて、失敗を通じた学びの活用も重要だと思います。大学外の現場と関わる研究だと、できるだけ失敗させたくないので、我々教員も先手を打ってサポートしがちです。しかしギリギリまで我慢して、細かい失敗をさせることで、時間をかけて準備することや、手順を追って行うことの重要性を身体に刻む機会になります。一度痛い目に遭って自分自身の気づきとすること、細かい失敗とその反省を活かした成功の体験が、学びを加速する契機になります。
社会人の場合でも、そのビジネスを必要としている人と接し、業務の痛手にはならない失敗を積極的に経験させ、乗り越え、解決に至る機会をつくることで、やりがいへと結びつけることができるのではないでしょうか。いきなり大きな失敗をして辞めたくなってしまう、という事態を防ぐためには、上司や先輩のコントロールも不可欠です。このコントロールには高度な気遣いが求められることもありますが、部下の成長によって、自らも楽になり喜びが得られ、相乗効果が生まれるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
