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グローバル化による「組織パラドックス」をマネジメントするには

青木 克生 青木 克生 明治大学 経営学部 教授

現在、企業を取り巻く環境はグローバル化がますます進むとともに、途上国といわれていた国や地域の発展も進んでいます。その中で、以前は、「日本のやり方」を海外の子会社にどう展開していくかが課題でしたが、近年では、現地の人材の知識や能力をいかに活かすかが課題になっています。その解決策にはどのような方法があるのでしょう。

海外の優秀な人材にとって魅力的ではない日本企業

青木 克生 これまで、日本の企業、特に製造業にとってグローバル化とは、日本的な生産システムや品質管理を海外の子会社に移植することでした。それは、日本のやり方に競争優位性があったからです。

 例えば、日本の大手自動車メーカーなどでは、生産現場から意見や知恵を出してボトムアップで改善を図るシステムが確立されていて、それは世界中で注目され、いまでは「kaizen」という言葉で広く普及しています。

 しかし、近年の自動車産業は、自動車という製品をグローバルで効率よく生産するだけでなく、いかにして、世界中の顧客に最適なモビリティ・サービスを提供するか、という形に変わりつつあります。

 すると、現地のニーズに適したサービスをはじめ、現地のインストラクチャーや仕組み、制度にあったモビリティ・インストラクチャーを提供していかなくてはなりません。

 そのためには、「日本式」にこだわるのではなく、それぞれの現地の人材の知識や能力を活かすことが重要になってきます。日本人の知識ややり方だけでは、現地に対応することはできないからです。

 この変化は、自動車産業に限ったことではなく、グローバルな環境における、すべてのメーカー、企業に共通した変化であり、課題であると言えます。

 例えば、現地の優秀な人材にとって、日本企業は、欧米の企業に比べて魅力的ではありません。

 その理由のひとつは、日本企業では、若いことを理由に、チャレンジングな仕事を任せてもらえる機会がなかったり、重要なポストにも就けません。これは、日本の企業には年功序列の概念が強いためです。

 近年では、年功序列の人事制度を廃止したという企業も多いのですが、それでも、例えば、会議の場などで、年長の上役が言ったことに、若手が真っ向から異を唱えることは、まだまだ難しいのではないでしょうか。

 また、仕事のスキルを上げるには経験や時間が必要で、その意味では、年配者ほど上のポストに就きやすいということはあるかもしれません。

 しかし、欧米の企業などでは、若手であろうと、会議で発言しない者は会議に出る必要がないと見なされますし、能力が高ければ、20代で課長になり、30代で部長になり、大きなプロジェクトを任せられることは普通のことです。

 どこの国であれ、優秀な人材は、こうしたシステムの中でしのぎを削っています。

 これは、年長者を敬う必要がないということではありませんし、人を大切にするとか、人の和を大切にするという日本企業のあり方の是非の問題でもありません。どのやり方が正解だとか、どのやり方が間違っていると、簡単に指摘することはできません。

 要は、世界中の優秀な人材にとって、日本企業はモチベーションが上がる環境ではないために辞めていき、その結果、企業として、グローバル環境における課題をクリアすることができないのだとしたら、そのための対策を講じることが必要だということです。

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