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グローバル化による「組織パラドックス」をマネジメントするには

明治大学 経営学部 教授 青木 克生

重要なのは「組織パラドックス」のマネジメント

 しかし、グローバル環境なのだから、日本のすべてを否定して西洋式になるべきだ、ということではありません。

 例えば、合理的、論理的思考方法が日本人は不得意で、西洋から学ぶべき点は多々あります。

 しかし、今後ますますAIやロボットが発展していくと、論理的な問題は機械に委ねれば良くなっていくでしょう。

 すると、「おもてなし」や「気配り」、「思いやり」といった日本的な美徳が、むしろ価値的な側面を強く反映するようになると言えます。つまり、そこに、日本の競争優位性が生まれることになると考えられます。

 つまり、これからの時代は、条件に適合する一方を選択する、あるいは優先順位をつけるという考え方ではなく、「組織パラドックス」と言うべき状況をいかにマネジメントするか、ということが重要になってくると考えます。

 すなわち、一見して矛盾する二つの側面の双方に取り組む、あるいはバランスを保つという考え方をベースに組織のあり方を考えていく、ということです。

 例えば、日本的な美徳が競争優位性になるということは、企業のグローバル化とローカル化のパラドックスということです。

 すなわち、世界標準の仕組みや、最先端のAIやロボットを取り入れなければ、そもそもグローバル環境での競争はできないでしょう。

 しかし、それだけではどこも同じで、競争優位性を保つことはできません。そこに、自分たちの独自の価値、それは自分たちの出自に繋がるローカルな仕組みや制度であり、それを付加価値としてどれだけ載せるのかが重要になるわけです。

 また、例えば、効率と開発の問題は、コストダウンとイノベーションのパラドックスでもあります。

 コストダウンは企業経営にとって重要ですが、それが優先順位になってしまうと、新しい製品やサービスを生み出すことが難しくなるでしょう。逆に、イノベーションを起こしても、効率的な生産体制がなければ、利益に繋げることができません。

 必要なのは、それらをどうマネジメントするかということです。

 また、社内のコミュニティのクローズとオープンのパラドックスもあります。

 もともと日本人は仲間内でコミュニティを形成することが好きです。そこでは価値観が共有され、こだわりが生まれることで、他者には真似のできないレベルに到達することがあります。すなわち、クローズ化したコミュニティの成果です。

 例えば、「改善」が企業ポリシーとなり、徹底的に追求されてきたことがそうです。しかし、「改善」の価値観にこだわりすぎると、大胆な変革の機会を損なうことにもなりかねません。

 異なる価値観を持つクローズ化されたコミュニティを企業内で維持する一方で、それらをブリッジする仕組みにも目を向けていくことが必要であるといえます。

 例えば、研究開発部門と生産部門それぞれのコミュニティの価値観を尊重しつつ、それをブリッジしていくといった具合です。すると、イノベーションの追求と、コストダウンの追求の両立が進展していくことでしょう。

 問題は、コミュニティ間のブリッジを上手くマネジメントすることで、それは、コミュニティをクローズ化させるだけでなく、どうオープン化していくのか、ということなのです。

 組織のマネジメントとは、これらの、いわば矛盾をいかにマネジメントするかということです。そのとき重要なのは、矛盾するどちらか一方を選択するのではなく、有機的な統合を考えることです。

 それは、以前から指摘されているグローバル・インテグレーションとローカル・イノベーションのバランスの問題なのですが、その概念が希薄な企業は、グローバルな環境で生き残っていくことは難しくなっていくでしょう。

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