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グローバル化は人を自由にする?アイデンティティを脅かす?

折方 のぞみ 折方 のぞみ 明治大学 経営学部 准教授

イギリスのEU離脱決定、アメリカの保守主義や各国における右翼勢力の台頭などの最近の世界情勢に鑑み、巷では「グローバリズムの行き詰まり」が囁かれるようになりました。日本では今まで、Go Globalというスローガンに代表されるように、グローバル化について単純に良いこと、進むべき唯一の方向性であるかのように語られることが多かったように思います。ただ、どんな物事にも光と影があるように、グローバル化には良い面もあれば負の側面もあります。私たちは今、「グローバル化ってなんだろう」「グローバリズム(グローバル化を是とする考え方)って本当に有効なの?」と、改めて考えてみる時期に来ているのかもしれません。

グローバルとインターナショナルの違い、わかりますか?

折方 のぞみ はじめに基本的なところを押さえておきたいと思います。「グローバル化(globalization)」とは、様々な物事を国ごとではなく地球(globe)規模で考える状況・現象のことです。

 つまりそれは、国家間(international)の関係を前提とする「国際化(internationalization)」とは似て非なるものです。日本ではこの二つの概念が無自覚に混同されて使用されていることも多いのではないでしょうか。

 巷でも「英語ができれば国際人=グローバルな現場で活躍できる人間に!」というような表現が散見されます。また、政治のグローバル化と経済のグローバル化はしばしば混同され、グローバリズムはその定義が曖昧なまま様々な位相で議論されているように見えます。

 こうした理解の曖昧さにつけ込んで、政治家がメディアを通して世論を操ろうとすることがあります。

 例えばトランプ大統領の言動を見てみましょう。彼はアメリカ第一主義を掲げ、格差社会の底辺にいる人たちのために反グローバルな政策を行っていると度々主張しています。

 そして、巧みなレトリックで世論を誘導し、生活を良くしたいという個々人の利害感情に訴える言動を繰り返します。増加する移民があなたたちの仕事を奪っているとか、アメリカの企業が儲かればアメリカ経済は良くなりあなたたちも潤う、など。

 他方、ビジネスマンでもあるトランプ氏はもともと大富豪や大企業の経営陣との繋がりが深く、その人事を見てもグローバル社会における勝者優位の政権であることは明らかです。

 大統領の言動からは、反グローバリズムを主張する国民感情を利用しつつ、結果的には現時点での「勝者」が利益を上げることを是とする論理が垣間見えます。

 「敵」を意図的に「外」に設定することで、アメリカのグローバル企業への不信感を国外に向ける効果も狙っているのではないかと考えられます。

 政治的には反グローバル=ナショナルな立場で自立を保ち、経済的には自国のグローバル企業のやり方に、他国はもちろん、自国民にも口出しさせない。

 そんなトランプ大統領の姿勢からは、グローバル化に関して政治面と経済面をきちんと分けた上で、今何が議論の対象になっているのかを考えることの重要性を感じずにはいられません。

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