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スポーツで養うのは従順さ? 主体性?

高峰 修 高峰 修 明治大学 政治経済学部 教授

セクハラやパワハラ、暴力問題など、スポーツ界の不祥事が後を絶ちません。それは、多くの場合、指導者が競技者に対して行っているため、指導者の問題にされがちですが、それでは問題の解決に繋がりません。スポーツ界が抱える問題の本質を直視し、改革する意識が必要です。

問題が起こる背景にはスポーツ界の社会的構造がある

高峰 修 近年、スポーツ界で連鎖するセクハラやパワハラ、暴力問題などの不祥事は、加害者の個人的特性というよりは、スポーツ界がもつ社会的構造の中で起きているといえます。その社会的構造とは、5つに大別できます。

一、非常に強い上下関係や権力関係。例えば先輩と後輩の間には上下関係、指導者と競技者の間には権力関係があります。そしてそうした関係の中では、下の者・弱い者は上の者・強い者の理不尽な指示に逆らうことが難しくなります。

二、集団主義。しかも、スポーツ界全体としてではなく、各競技ごとに強く結束し排他的になる、いわば日本的な村社会のようなものです。その結果、組織の和を乱す人は排除されたり、組織にとって都合の悪いことが起きても内々で済まされたり隠蔽されがちになります。

三、勝利至上主義。もちろん、スポーツは原則として勝利を目指すことで成り立っていますので、こうした意味の勝利主義はスポーツを成り立たせる大きな動機です。しかし、それが過剰になり勝利至上主義に陥ると、一般社会では通用しない行為なども容認されがちになってしまいます。

四、パフォーマンス主義。勝利至上主義による結果主義といえますが、現役のときに残した競技成績が、例えばOB会や競技団体内の人間関係、役員人事などにまで影響するのです。指導者として育てた競技者たちが良い成績を挙げると、競技団体内での発言力が増し、すべての権力が集中することもあります。

五、スポーツ界に対する一般社会の認識。スポーツ界で暴力的な指導が行われても、スポーツの指導とはそういうものだろうという認識が一般社会にあることも、スポーツ界に自浄作用が働かない原因になっていると思います。

 こうした構造が絡み合うことで、パワハラやセクハラも起こりやすくなるのです。例えば、セクハラというと男女の問題と思われがちですが、男性の指導者が女性指導者よりも圧倒的に多いため、男性から女性という形で現れるケースが多いのであり、本質は権力関係の問題です。実は、最近は競技団体に女性役員も増えてきましたが、女性役員による男性競技者に対するセクハラも起きています。しかも、こうした事件が起きても被害者が声を上げることができなかったり、声を上げても黙殺されたり、あるいは排除されたりと内々で隠蔽されてしまうため、自浄作用が働かず、同じことが繰り返されています。また、メディアの報道は競技の結果が中心で、好成績であれば無条件で賞賛し、その過程でなにが起きていたのかは報道しません。すると、なにをやっても勝てば官軍、例えば加害者が指導者や役員であればそこに権力が集中することで、ますます批判ができない状況がつくられてしまうのです。

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