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2018.05.30

スポーツで養うのは従順さ? 主体性?

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組織に関わる人たちの意識改革が必要

 では、こうした構造を変えていくにはどうしたら良いのか。抽象的な言い方ですが、やはり、組織に関わる人たちの意識改革が必要です。そのためには、競技経験者だけでその競技団体の役員を構成するのではなく、違った価値観をもっている人を外部から入れるという方法があります。組織にコンプライアンスやガバナンス感覚を取り入れるために、一般社会で通用する価値感をもつ人をあえて入れるのです。2000年から2008年にかけて公益法人制度の改革があり、スポーツ界もその影響を受けて外部の人が加わる仕組みになりましたが、その外部の人がスポーツ関係者だったりするわけです。これでは本来の理念からはほど遠く、組織の意識改革に繋がるとは思えません。例えばビジネス界や、あるいは市民団体など、スポーツ界にはない風土で育った人を組織に積極的に入れていくことが重要です。

 また、時間はかかりますが、若手の指導者や役員の育成を地道に続け、時間をかけて組織としての意識を変えていくことも必要です。例えば、サッカーでは指導者のライセンス制度があり、高い競技レベルの指導者になるためには上級のライセンスを取得しなければならないシステムになっています。ライセンスを取得するためには研修を受けなくてはならず、そこでは、トレーニング方法などだけではなく、自然科学をベースにした身体に関する知識や栄養学、そして選手の安全管理のための知識や組織のマネジメントについても学ぶのです。こうした取組みは、サッカーだけでなく多くの競技で行われています。しかし、指導者を目指す人はどうしても競技力を上げるトレーニング法などに関心が強く、安全管理やマネジメントは二の次になりがちです。まず、こうした意識を変え、組織の意識改革に繋がる人材育成を実践していくことが課題といえます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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