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近年、教師の長時間労働が社会の注目を集めています。労働条件の悪さは、教員採用試験の倍率低下や教員不足をもたらし、日々の教育実践を脅かしつつあります。過酷な労働環境はどのようにして作られてきたのか。教師の働き方改革はそれを改善できるのか。改善するためには何が必要か。これらの問いに向き合うことで、「教職の危機」を乗り越えていくことを模索する必要があります。

教師に「残業代」は支払われるのか

鈴木 雅博 小中学校の教師の多忙さについては、これまで重ねて指摘されてきました。文科省による教員勤務実態調査(2016年)では、過労死ライン(月80時間以上の残業)相当の週60時間以上勤務する教師の割合は、小学校で3割強、中学校で6割弱いることが明らかとなっています。

 また、OECD(経済協力開発機構)による国際教員指導環境調査(2018年)でも、日本の小中学校教員の仕事時間は調査国中で最長でした。

 もちろん、一般の企業でも、同じように長時間働いているという人もいます。しかし、一般企業の場合は、残業すれば25%割増の時間外手当の支払い対象となります。

 ところが、教員の場合は残業手当というものがありません。これは、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)(1971年)という法律によって定められています。

 給特法では、時間外勤務手当等を支給しない代わりに給料月額の4パーセントを教職調整額として支払うことを定めています。

 これは、教師の職務と勤務態様の特殊性によって説明されています。教師の仕事は教材研究等の自主的・自発的活動と指揮命令による業務が渾然一体となっている点、また、学期中と長期休業中の勤務態様に違いがある点で、通常の労働とは異なるというわけです。

 しかし、現在の教師は義務的な業務で十分忙しく、自主性を発揮できる時間的余裕はありませんし、夏休み等も研修や三者面談、部活動指導等が目白押しで、「閑散期」というわけではありません。4%という教職調整額も先ほど述べた勤務実態に照らしてみると、まったく不十分なものです。

 そもそも給特法では、政令で定める基準である超勤4項目(1.生徒の実習、2.学校行事、3.職員会議、4.非常災害等について、臨時又は緊急のやむを得ない必要がある場合)を除き、教師に残業を命じることを禁じています。

 しかし、給特法によって残業手当という追加コストが生まれないことや、超過勤務させていることへの管理者へのペナルティーがないために、校長による勤務時間管理は十分に機能しているとは言い難い状況です。

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