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マーケティングとは、販売を不要にする価値づくり

加藤 拓巳 加藤 拓巳 明治大学 商学部 専任講師

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市場のグローバル化が進む現代、かつては世界市場を席巻した日本企業の存在感が低下していると言われます。そこには多くの要因が指摘されていますが、その内の1つに、マーケティング力の乏しさがあります。その状況を打開するためには、マーケティングの本質を理解し、企業の組織全体で考えを共有することが重要です。

「どう売るか?」ではなく「なにをつくるか?」

加藤 拓巳 マーケティングというと、広告やキャンペーンをイメージしている人が多いと思います。ところが、そのイメージは、本来のマーケティングのあり方とは真逆です。マーケティングとは、「どう売るか?」ではなく、「どんな価値をつくるか?」を考えることです。

 商品・サービスを企画する際にやってはいけないことは、消費者に何が欲しいのか「答え」を聞いてしまうことです。ヘンリー・フォードやスティーブ・ジョブズ、本田宗一郎などの経営者は、口を揃えてそのような市場調査は無意味だと言います。なぜなら、消費者は自分で自分の欲しいものを言えないからです。消費者は優秀な評論家ですが、優秀なマーケターではありません。

 有名な例では、馬車の時代に何が欲しいかを聞けば「速く走る馬」と答えが返ってきます。「車」とは返ってきません。そのように、既存商品の性能の延長線でしか、消費者は想像できません。価値を考えるのはマーケターの仕事であり、その活動がマーケティングなのです。

 では、価値をどう考えるのか。簡単に言えば、「消費者が高いお金を払ってでも喜んで買ってくれるか?」を考えることです。そのために必要なことは、消費者の抱える実用的・心理的問題を解決することです。価値は問題解決から生まれます。例えば、体調が悪く、どうしても治らなくて困っているとき、医師が「この薬を使えば治る」と言ったら、それが高価でも、人は喜んでその薬を買うでしょう。これほど実用的な価値はないからです。

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