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2023.02.15

マーケティングとは、販売を不要にする価値づくり

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失敗する確率を減らすために科学が存在する

 ここまでお話してきたコンセプトは、抽象的なため意思決定の難しさがあります。消費者からすると大きな価値のあるコンセプトが、意思決定者からすれば意味がわからないことも多々あるかと思います。

 そこで登場するものが科学的検証です。マーケティングの場における科学的検証の役割は、「絶対の成功を保証すること」ではなく、「失敗する確率を減らすこと」です。自然科学と異なり、消費者心理を対象とするマーケティングでは、絶対の成功を確約することはできません。今の状況を変える新商品・サービス・技術が生まれたら、今までの価値観が社会的に問題があると指摘されたら、消費者の心理はまったく違う状態になるかもしれません。

 しかし、検証によって、筋の悪い失敗作を見つけることは容易です。大きな投資をする前に、無駄な失敗を防ぐことができるのだから、商売人として極めて重要です。冷徹なほど客観的な検証によって、多数の選択肢をふるいにかけ、成功の可能性が高いものを厳選する。言葉にすると当たり前ですが、これを当たり前に実行できている組織はまだ少ないと指摘されています。

 繰り返しですが、検証の際にも消費者は批評家であることを認識すべきです。コンセプト検証で悪い結果が出た際に、すぐにコンセプトを捨ててしまってはいけません。なぜなら、コンセプトを具体的に想像できていない可能性があります。日々の生活において、どんな価値を得られるのかを具体的に想像できないと、消費者は適切な評価をすることはできません。よって、コンセプトの企画段階であっても、モックアップを制作し、価値を疑似経験できる環境を用意することが必要です。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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