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マーケティングとは、販売を不要にする価値づくり

加藤 拓巳 加藤 拓巳 明治大学 商学部 専任講師

問題解決よりも問題発見が難しい

加藤 拓巳 日本が高度成長していた時代は、問題の発見は簡単でした。それは「壊れないこと」です。明確化されている答えに向かって、日本企業は技術力を結集させ、優れた耐久性を持つ家電や車で世界を席巻しました。

 商品・サービスが市場に溢れる現在、価値づくりの難しさは問題の発見にあります。消費者の身の回りには潜在的に困りごとがたくさん潜んでいます。しかし、なんとなく不満が溜まっていたり、我慢していたり、自分なりに工夫して解消していたりする心理的な問題は一目では見えません。この問題を発見することがマーケティングの第一歩であり、最も難しい作業です。

 この問題を明確に捉えられれば、商品・サービスの存在意義であるコンセプトが明確になります。コンセプトとは、消費者の流行、業界で話題の技術、デザインなどではなく、それらは一旦議論の外に置いておき、本質的な価値を定義することです。具体的に決めるべきことは、Who / What / Howです。その中で最も重要な要素はWhoです。どんな困りごとを抱えている人なのかを明確に描く必要があります。そこには、消費者が自ずと購入する高い価値があります。世の中にあいまいなコンセプトの商品・サービスが溢れているのは、この問題の発見に時間を使っていないで、競合他社の動向ばかり見ているからです。そのような価値の低い商品を売るには、大量の広告をうったり、値引きキャンペーンをする必要があります。つまり、広告やキャンペーンとは、ある意味、消費者にとって価値のないものを、なんとか売ろうとする活動ともいえます。まあ適量なら認知の獲得に必要ですが。

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