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#5 働き方はいろいろあって良い?

山崎 憲 山崎 憲 明治大学 経営学部 准教授

人の知恵や経験や勘を活かす仕事は絶対になくならない

1960年代、70年代に高度経済成長を成し遂げ、80年代には、Japan as Number Oneと言われ、世界を席巻した日本には、みんなが一致団結し、ひとつの方向に向かってまっしぐらに進むことが成功に繋がるという成功体験が根強く残っているのかもしれません。

しかし、少子高齢化や、人口減少を迎えた今日、尊重されるようになっているのは、ひとりひとりの個性であったり、ひとりひとりの生き方、ひとりひとりの幸せです。多様性が重要視されるようにもなっています。ひとつのやり方ですべての問題が解決できると思うのは勘違いです。

その意味では、プラットフォームビジネスも様々な戦略のひとつであり、ハイエンドやミドルもひとつのあり方に過ぎません。誰もがハイエンドになれるわけではありませんが、なる必要もないのです。

実際、AIやRPAで私たちの生活のすべてがサポートされることはありません。例えば、台風で家の屋根が壊れて雨漏りするとき、頼りになるのは町の大工や工務店です。

AIやRPAが得意な定型的な仕事とは、画一的な環境における画一的な作業です。一軒一軒、形の違う家を直すのは職人でなければできないのです。

逆に言えば、AIやRPAを効率的に活用するために、画一の家が建ち並び、すべてのものが画一にできている町や生活環境になったとしたら、人は、そこで快適に暮らせるでしょうか。

私たちが快適な環境で暮らしていくためには、人の知恵や経験や勘を活かす仕事は絶対になくならないはずです。でも、そうした仕事はローと分類されるかもしれません。だとしたら、ローというクラスの仕事にも、ハイエンドやミドルと同じように、それぞれの価値があると言えるわけです。

これからの時代、学生は、まず、ハイエンドを目指す学習を始めることになるでしょう。でも、あらためて言いますが、誰もがハイエンドになれるわけではありませんが、なる必要もないのです。

自分の個性や適性を知っていく中で、自分なりの仕事や生き方、幸せを求めることが大切だと思います。

みんながハイエンドやミドルを目指して頑張り、あるいは無理をして、スキルを上げていかなければいけない社会ではなく、どんな仕事であっても、ひとりひとりが自分なりの生き方をすることができる収入を保証する仕組みがある社会を構築することが重要です。

そのためには、政策に期待するだけでなく、私たちひとりひとりが、自分たちの要望の声を上げることが必要です。それは、労働組合かもしれないし、NPOかもしれないし、まったく新しい組織かもしれないし、選挙の投票かもしれません。それが人事労務管理を動かすことにも繋がります。

実は、こうした考え方は、SDGsの精神に通じるものです。サステナビリティは画一ではなく、多様性の中にあるのです。

次回は、新規学卒採用について解説します。


#1 人事労務管理とは?
#2 日本は他国の下請け産業の国になる?
#3 労働者は三層化する?
#4 日本の労働者の二極化が進行する?
#5 働き方はいろいろあって良い?
#6 新規学卒採用はなくなる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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