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#2 日本は他国の下請け産業の国になる?

山崎 憲 山崎 憲 明治大学 経営学部 准教授

プラットフォームビジネスが世界の経済をリードし始めている

前回、述べたような論議が起きている背景には、製造業中心で発展してきた日本にとって、次の成長の基軸が育っていないということ。すなわち、グローバルに競争が激しくなる中で、成長の道筋が見えていないという危機感があります。

そこで、「Society5.0」などの方針が、2017年12月8日に内閣が閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」に登場するのです。そこでは、社会の様々な分野をAI、ICT、ビッグデータを活用して繋ぎ合わせることが語られています。

なぜ、そのような方針が生まれたのかというと、GAFAと呼ばれるアメリカ発の企業がプラットフォーマーと言われる存在となり、まさに、AI、ICT、ビッグデータを駆使することにより、世界経済をリードする存在になっているからです。

実際、世界の巨大産業のひとつである自動車産業をリードしてきたドイツの企業も、次世代の自動車開発において、その基幹プラットフォームにGAFAの一角であるGoogleを使い始めています。逆に言えば、Googleがなければ、次世代の自動車開発が進まないのです。

こうした状況は日本でも進んでいます。つまり、このままでは、日本の産業も他国のプラットフォーマーの下請けに陥ってしまうような状況になるわけです。

その結果、自動車をはじめ、その産業の製造品などから得られる消費者の行動情報など、様々な情報がプラットフォーマーによって集積され、活用されることで、彼らと下請けの立場の差は絶対的なものになっていく恐れがあるわけです。

そうした危機感から生まれたのが、日本独自でビッグデータを活用することを目指すSociety5.0というわけです。それは、医療、介護、教育、産業活動、交通、都市計画、行政など様々な領域に及びます。

プラットフォームビジネスが世界の経済をリードする背景を考えれば、日本の政策は決して間違っていないように思えます。

しかし、問題は、こうしたSociety5.0を推進していく人材です。圧倒的に人材が不足している現在、その育成に注力することが必要な一方で、それによる弊害も起きつつあります。まさに、それが、人事労務管理の論点に繋がっていくのです。

次回は、日本が目指す産業構造について解説します。


#1 人事労務管理とは?
#2 日本は他国の下請け産業の国になる?
#3 労働者は三層化する?
#4 日本の労働者の二極化が進行する?
#5 働き方はいろいろあって良い?
#6 新規学卒採用はなくなる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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