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人材は、ハイエンド、ミドル、ローの三つに分けて提示されている

2019年6月21日、内閣府統合イノベーション戦略推進会議による「統合イノベーション戦略2019」が発表されました。その中で、人材に関して、ハイエンド、ミドル、ローの三つに分けて提示しています。

ハイエンドとは中核人材であり、ミドルがそこを補佐する役割を担います。これらの人材は、戦略立案力、プロジェクトの運営を担うことになります。一方で、大多数の労働者はローとなり、定型的な業務を担うことになります。

実は、GAFAのような企業でイノベーション戦略を担う人材は相当にレベルが高いのです。トップレベルの大学の理数系の知識をもつとともに、プロジェクトを引っ張っていくリーダーとしてのマネジメント力も求められます。

日本がこれからプラットフォームビジネスを目指していくためには、GAFAを牽引してきたような、このような人材を育成していかなければなりません。

それでも、それは、本当に一握りの逸材ということになると思います。それを補佐するミドルクラスも、システムの運用や管理を担うためには相当の専門スキルが必要になります。

そこで、小学校からプログラミング教育を導入したり、従来の暗記型の学習ではなく、アクティブラーニングなど、自主、自立的に物事を考える能力を育む教育が盛んに導入されています。

大学入試も、正解を答えさせる試験から、問題文から課題を読み取り、文章で答えさせるような試験に変えようとしています。

こうした教育界の動きも、政府の未来デザインに則り、ハイエンドやミドルに求められる能力を育成することを目指しているものと言えます。

しかし、一方で、子どもの頃から野球やサッカーを一生懸命やっても、誰もがプロ選手になれるわけではないように、どんな教育モデルであっても、誰もがハイエンドやミドルになれるわけではありません。社会における役割分担を考えれば、誰もがハイエンドやミドルになる必要もありません。

週末に運動公園で野球やサッカーを楽しむ生活があっても良いし、実は、そうした人たちがプロのスポーツ界を支えているとも言えます。

ところが、大多数の、ハイエンドやミドルになれなかった人、なりたくなかった人は、ローというクラスになり、下請け企業で雇用される労働者や請負労働者に振り分けられ、低い労働条件に固定化される可能性が高まっているのです。

もちろん、ハイエンドやミドルの人たちにも、それぞれの仕事に対するストレスや不満などがあるでしょう。同じように、定型的な業務を担うことになるローの人たちにも不満が出てくるはずです。

では、そうしたストレスや不満をサポートする仕組みが、この未来社会デザインにおいてなされているかというと、ローのクラスに対する視点が欠けていると感じざるをえません。

結局、それが人事労務管理の論点にも表れています。それをなおざりにしていては、社会は歪んだものになっていくのです。

次回は、人事労務管理の論点について解説します。


#1 人事労務管理とは?
#2 日本は他国の下請け産業の国になる?
#3 労働者は三層化する?
#4 日本の労働者の二極化が進行する?
#5 働き方はいろいろあって良い?
#6 新規学卒採用はなくなる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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