明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

#2 運動するほど免疫力は上がるの?

鈴井 正敏 鈴井 正敏 明治大学 経営学部 教授

強度な運動による刺激で白血球の細胞は死にやすくなる

人の免疫の主役は白血球であることは、皆さんもご存じだと思います。ところで、白血球は非常に種類が多いことはご存じでしょうか。好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単球などなど。さらに、リンパ球には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞などがあります。

これらは、攻撃方法が異なるなど、ひとつひとつに違った役割があります。さらに、運動に対する反応も異なるのです。

ほんの少し体を動かすだけでも反応する白血球もあれば、運動強度に応じてだんだん血中に上がってくるものもあります。また、精神的な高まりや興奮で反応するものもあります。

例えば、笑う、という興奮によってナチュラルキラー細胞が反応します。ナチュラルキラー細胞はがん細胞を攻撃する種類なので、よく笑うことでがんに罹りにくくなると言われることがあります。

では、前回述べたように、ハードトレーニングを行って参加した大会後に、選手が風邪に罹りやすくなるのはなぜか。それは、疲労の蓄積により一つ一つの免疫細胞が弱くなっているためだと考えられます。

実は一回の運動でも、運動中には白血球濃度は上がり、運動後は安静レベルを下回って低下します。運動中に暴露する高い濃度のアドレナリンや活性酸素によって、おそらく、白血球の一部は傷んだり死んでいくのです。

もちろん、細胞は死んだら終わりではなく、それは新しい細胞を作る刺激になり、細胞の新陳代謝に繋がります。

それが過度になると、成熟する時間が足りずに幼若細胞が増えて、機能が低下するのです。たった一回の運動でこうなることはありません。オーバートレーニングになるとこのような悪い影響が出てくるのです。

オリンピック選手などの高い体力を持った人たちが意外と風邪を引きやすかったりするのはこのためです。

つまり、適度な運動を継続していくことが、免疫細胞の健康を維持していくことに繋がるわけです。しかも、このことは免疫力の問題だけでなく、いわゆる生活習慣病を防ぎ、健康な生活を維持していくことにも繋がるのです。

次回は、生活習慣病について解説します。


#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?
#2 運動するほど免疫力は上がるの?
#3 ウイルス以外にも見えないリスクってあるの?
#4 生活習慣病の人はコロナに罹りやすい?
#5 健康に暮らすためには工夫が必要?
#6 ライフスタイル・マネジメントってなに?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

リレーコラムの関連記事

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

2022.9.22

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 吉松 梓
人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

2022.9.15

人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 本所 靖博
失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

2022.9.8

失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 佐々木 羊介
語彙力を鍛え、言葉の優れた使い手になろう

2022.9.1

語彙力を鍛え、言葉の優れた使い手になろう

  • 明治大学 文学部 教授
  • 矢内 賢二
理解し合い、世代の壁を越えていこう

2022.8.25

理解し合い、世代の壁を越えていこう

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 原 ひろみ

新着記事

2022.09.22

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

2022.09.21

すべての子どもに、たくさんのキャンプを体験してほしい

2022.09.15

人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

2022.09.14

現代の社会的課題を解決する糸口は、中庸の欲張り!?

2022.09.08

失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

人気記事ランキング

1

2022.09.21

すべての子どもに、たくさんのキャンプを体験してほしい

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

4

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

5

2018.11.06

#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?

連載記事