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#5 健康に暮らすためには工夫が必要?

鈴井 正敏 鈴井 正敏 明治大学 経営学部 教授

日常の身体活動だけでは運動として不十分

この連載で、文明化社会で暮らすこと自体に見えないリスクがあり、それを認識して、意図的に努力しなければ、健康は得られないことを述べてきました。では、健康を維持するためになにをすれば良いのかというと、そのひとつが、適度な運動です。

実は、運動について、日常の身体活動でも良いという議論があります。通勤のために駅まで歩くことでも、家事で身体を動かすことでも効果的な運動になるというのです。しかし、それでは不十分だと、私は考えます。

例えば、肥満の要因となる脂肪を燃やすことを考えると、ややつらい運動を30分間続けることが有効です。この連載の第2回で、強すぎる運動は免疫力の点から逆効果になる恐れがあることを述べましたが、ややつらいというのは、やや息が弾むが、会話はできるというレベルです。

例えば、ジョギングやウォーキングなどであれば、自分の体力に応じて、ややつらいペースで30分間行うことはできると思います。それが適度な運動であり、有効なのです。

30分間続けるというのは、脂肪を燃やしてエネルギーに変えるためには複雑な化学変化を経なければならないからです。

生物にはTCAサイクルというエネルギーを作る回路があります。脂肪も、このサイクルに入れて燃やすのですが、そのためにはβ酸化という過程を経なければなりません。その化学変化が活性化するには20分かかります。

すなわち、運動を一定時間以上続けなければ脂肪は効果的には燃えないのです。

こうした体のシステムを考えると、有効となるややつらい運動を、日常の身体活動で30分間続けることはあるでしょうか。多くの人にとって、そのようなことはないのではないでしょうか。

すると、例えば、最寄りの駅まで歩くのでは不十分で、ひとつ先の駅まで早足で歩くなどの工夫が求められます。つまり、日常の身体活動に任せるだけではなく、意図的な運動や工夫を行うことが必要になるわけです。

文明化社会のなかでは、無意識にその利便性に頼る生活になっています。それ自体が生活習慣病のリスクとなっていることを理解し、意識して運動することが必要なのです。

次回は、ライフスタイル・マネジメントについて解説します。


#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?
#2 運動するほど免疫力は上がるの?
#3 ウイルス以外にも見えないリスクってあるの?
#4 生活習慣病の人はコロナに罹りやすい?
#5 健康に暮らすためには工夫が必要?
#6 ライフスタイル・マネジメントってなに?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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