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#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?

明治大学 経営学部 教授 鈴井 正敏

強すぎる免疫システムは暴走する

2020年、新型コロナウイルスの流行により、私たち誰もが持っている免疫力に対する関心が高まりました。確かに、免疫力とは、私たちの体内に入ったウイルスや細菌などの異物から体を守る仕組みなので、それが高まれば、コロナウイルスにも冒されにくくなるわけです。

では、免疫力は強ければ強いほど良いかというと、そうではありません。免疫システムが過剰に反応し、異物だけでなく、自分自身の血管や臓器にまで障害を起こすことがあります。今回よく出てきた言葉のサイトカイン・ストームもその反応のひとつです。

要は、免疫システムが暴走し、体内の正常な臓器まで攻撃してしまうのです。それにより、肝臓や腎臓、肺などが機能不全に陥る自己免疫疾患や多臓器不全を起こすこともあります。

つまり、免疫力とは強ければ良いというものではなく、適正を保つことが重要なのです。

そのための方法として、栄養のある食事をすること、十分な睡眠をとること、とともに、運動することが注目されました。

実際、コロナウイルスの蔓延によりステイホームが推奨され、引きこもる人が増えた一方で、意識の高い人では時間のゆとりができたこともあり、ウォーキングやジョギングをする人も増えました。それ自体はとても良いことです。日頃、運動不足の人にとっては良い機会になったと思います。

しかし、運動によって免疫力が高まるのかというと、実は、科学的なデータが十分あるわけではありません。

確かに、運動をすると白血球の新陳代謝を促進したり、気分が爽快になり、自律神経のバランスが良くなることで、それが白血球にも影響して免疫にはプラスとなります。しかし、データとしては、運動をしたら免疫力が低下した、ということの方が多いのです。

運動と免疫の関係が最初に注目されたのは、マラソンなどハードな運動のイベントに参加するためにトレーニングを続けた人が、大会後、風邪に罹りやすいということでした。

その後、ハードなトレーニングをやり過ぎると、むしろ、免疫力が落ち、感染しやすくなる、ということがわかったのです。

つまり、免疫力との関係で見ると、運動には二面性があり、適度な運動ではプラスの影響がある一方、やり過ぎてしまうとマイナスの面が出てくるということなのです。

次回は、運動と免疫力の関係について解説します。


#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?
#2 運動するほど免疫力は上がるの?
#3 ウイルス以外にも見えないリスクってあるの?
#4 生活習慣病の人はコロナに罹りやすい?
#5 健康に暮らすためには工夫が必要?
#6 ライフスタイル・マネジメントってなに?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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