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#3 CSRは企業の収益に繋がる?

塚本 一郎 塚本 一郎 明治大学 経営学部 教授

世界中で急拡大しているESG投資

経営戦略論で有名なマイケル・ポーターは、2011年に、CSV(Creating Shared Value)という考え方を提起しました。それは、企業の経済価値と社会価値を同時に追求する経営戦略のことです。

例えば、イギリスの大手通信会社は、治安が悪く、現金決済が非常に危険だったケニアに、ケータイによる決済システムを導入し、社会状況の改善をもたらすとともに、アフリカ全体で1千万人以上の新たな市場を生み出しました。

つまり、企業が社会状態の改善に貢献することで、それを収益にも繋げた、ということです。企業のこうした取り組みを、ポーターは、社会的価値を創造することで経済的価値を創造できる、という意味でCSVと言ったのです。

この考え方に従えば、CSRも単なるコストではなく、社会的価値を生み、経済的価値を創造する投資ということになります。

しかし、一方で、ポーターのCSV論には批判もあります。CSRにもしっかり取り組めない企業が多い中で、CSVを考えることなどできないというわけです。

ところが、今日の若い世代は、企業の経済的価値だけでなく、社会的価値にも注目するようになっています。

例えば、学生は、就職先としてCSRに積極的な企業に関心をもちますし、また、収益だけを考える企業よりも、社会貢献に積極的な企業の従業員は自社に対する誇りやロイヤリティが高く、それは、当然、仕事に対するモチベーションに繋がっています。

さらに、近年では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した企業を重視して投資を行うESG投資が世界中で増加しており、その投資額は、2018年には3400兆円にも達しています。

つまり、世界中の多くの投資家が、ESGに配慮した活動を行っている企業は、長期的に見て成長する企業と見なしているということです。

こうした状況を考えれば、CSRを含めた社会貢献活動によって社会的価値を生む取り組みは、企業にとって決して単なるコストとは言えないことは明らかです。

企業側もこうした状況を理解するようになってきています。

ところが、CSRや社会的価値の本質が理解できていない、あるいは、取り組んでいるように見せるために、実践のともなわない空疎な理念を掲げたり、実体のともなわない数字を見せて、あたかも、しっかり取り組んでいるかのように見せる現象が起きているのです。

それが、グリーンウォッシュや、SDGsウォッシュと言われるものです。

次回は、企業の非財務的価値の見える化について解説します。

#1 企業の社会的責任とは?
#2 なぜ、CSRに取り組まなければならないの?
#3 CSRは企業の収益に繋がる?
#4 見せかけのCSRとは?
#5 私たちにできることとは?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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