2024.03.14
- 2020年7月17日
- リレーコラム
#5 私たちにできることとは?
塚本 一郎 明治大学 経営学部 教授私たちの生き方や暮らし方が企業に影響を与える
前回述べた、企業の非財務価値の「見える化」には、私もたずさわっています。方法としては、社会価値ような非財務価値の貨幣価値換算が最もわかりやすいと考えています。
例えば、SROI(Social Return On Investment、社会的投資利益率)を応用して、CSRの取り組みを投資収益率として数字化することです。
実は、日本ではCSV戦略の考え方には批判が多いのですが、SROIのような形でCSRを可視化することができれば、CSV戦略に対しても新たな捉え方が出てくるのではないかと思っています。
また、ESG投資も、日本は世界に比べると、まだ規模が小さいのですが、SROIによる社会価値の見える化・数値化により、投資家の関心がより高まると考えています。
大切なのは、こうした取り組みが世界のサステイナビリティに繋がることだということです。CSRは単なる流行でも、広報宣伝のためのツールでもありません。
ESG投資も同じです。CSRは流行だからというような短期的な利益や視点で投資を考えるのではなく、長期的な視点で企業活動を捉えることが重要なのです。
企業の非財務価値の「見える化」づくりは、そのために必要な課題だと考えています。
また、企業や投資家だけでなく、一般の消費者や生活者も、社会の一員として、企業のステークホルダーの一員として、サステイナビリティの意識をもつことが必要な時代だと思います。
その意味では、エシカル消費(倫理的な消費)が広まっていくのは歓迎すべきことですが、一方で、例えば、レジ袋の有料化に対して不満をもつ人も多いと言います。消費者のそうした意識が、小売店にレジ袋サービスを続けさせる要因にもなりかねません。
利便性を多少損なっても、環境のサステイナビリティを考えてマイバッグを持ち歩くことは、世界では常識になってきています。日本でも、消費者と小売店などが一体となって取り組むことが重要なのです。
一部の人たちの間では、SDGsは、もう理解されていますが、まだ広く普及していない状況です。2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された、国際社会全体の持続可能な開発目標ですが、実は、小学生世代は、学校で教えてもらうことで、関心が高いのです。
こうした世代が学び育っていくことは、とても頼もしいことです。社会人の方々も、SDGsやサステイナビリティについて、自ら調べたり、学んでみてはいかがでしょうか。
社会に対する企業の影響力はとても大きいのですが、その企業に影響を与えられるのは、私たちの生き方や暮らし方でもあるのです。
#1 企業の社会的責任とは?
#2 なぜ、CSRに取り組まなければならないの?
#3 CSRは企業の収益に繋がる?
#4 見せかけのCSRとは?
#5 私たちにできることとは?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。