明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

#2 なぜ、CSRに取り組まなければならないの?

明治大学 経営学部 教授 塚本 一郎

株主主権的な企業観からステークホルダー的な企業観へ

CSRと言われても、具体的になにをすれば良いのかわからず、とりあえず法令を遵守することだけを意識している企業も多いと思います。もちろん、法令を遵守することは重要ですが、CSRの概念はそれだけではありません。

例えば、自社に関与する人を考えてみてください。株主、従業員、取引先、顧客、と思い浮かぶと思います。

彼らからは、投資や労働、納品、売価を与えられ、それに対して、配当や給料、取引額を支払い、顧客には満足してもらえる商品やサービスを提供しています。

つまり、こうした伝統的な企業モデルで考えれば、企業は利益を上げることによって、責任を果たせることになります。

しかし、企業の利害関係者(ステークホルダー)は、この四者だけでしょうか。もっと視野を広げて考えれば、政府や地域社会、NPOやNGO、そして地球環境もあることがわかります。

例えば、電気や石油などのエネルギーをまったく使わずに活動を行っている企業は、まずないでしょう。つまり、企業は、地球環境からも活動に必要なものを与えられているわけです。それに対する責任はどう果たせば良いのでしょう。

企業は株主のものという考え方があります。だから、利益を上げて株主に配当を出すのが良い企業ということになります。

しかし、企業価値に貢献し、影響力を与えているのは株主だけではありません。企業は多様なステークホルダーによって成り立っているのです。

ですから、その多様なステークホルダーに配慮した企業統治、経営を行うことが必要であり、それを実践することが企業の社会的責任、CSRということなのです。

CSRとは、株主主権的な企業観からステークホルダー的な企業観をもつことなのです。

すると、例えば、従業員やサプライチェーンに対しても、給料や支払いをすれば責任が果たされるのではなく、潜在するリスク(環境、人権、労働安全衛生、等)を低減することも重要であることや、地域社会や地球環境に対する貢献も大切であることがわかってきます。それが、今日の企業に求められていることなのです。

一方で、こうしたCSRに取り組むことは、コストと考えがちです。利益に直接繋がらないが、やっておかなければまずいからやる、という考え方です。

ところが、近年では、CSRに取り組むことが企業価値を高め、企業の成長にも繋がっているのです。

次回は、企業の評価について解説します。

#1 企業の社会的責任とは?
#2 なぜ、CSRに取り組まなければならないの?
#3 CSRは企業の収益に繋がる?
#4 見せかけのCSRとは?
#5 私たちにできることとは?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

連載コラムの関連記事

#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?

2020.12.1

#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 鈴井 正敏
頭を一度クリアにし、アイデアの創出を促そう

2020.11.26

頭を一度クリアにし、アイデアの創出を促そう

  • 明治大学 理工学部 教授
  • 小野 弓絵
#5 日本の企業は時代遅れになる?

2020.11.24

#5 日本の企業は時代遅れになる?

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 長野 史麻
#4 サステナビリティ経営は政治に左右される?

2020.11.20

#4 サステナビリティ経営は政治に左右される?

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 長野 史麻
国内外の新聞や雑誌の見出しを読んで世界を知ろう

2020.11.19

国内外の新聞や雑誌の見出しを読んで世界を知ろう

  • 明治大学 商学部 教授
  • 小林 尚朗

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.11.25

エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

2020.11.18

脳の活動を可視化することで、人は新たな自分に変われる

2020.11.11

アメリカ・ファーストでは、国際経済の新たな秩序づくりはできない

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2020.10.28

アフリカ独特のユルさが、アフリカらしい発展の鍵となる

人気記事ランキング

1

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

4

2020.11.25

エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

5

2020.03.18

幻想的に光る「夜光雲」が地球温暖化のメカニズムを解く

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム