2024.03.14
- 2020年7月14日
- リレーコラム
#4 見せかけのCSRとは?
塚本 一郎 明治大学 経営学部 教授CSRを可視化する指標の標準化づくりが必要
グリーンウォッシュやSDGsウォッシュとは、企業が環境問題やSDGsに取り組んでいるようなアピールをするものの、実際にはほとんどやっていなかったり、都合の良い数字を開示するものの、断片的な数字で、具体的なデータは見せないような行為を指します。
企業は、ある意味、広報や宣伝をするような意図でこうした行為をしているのかもしれませんが、学生が就活に際して、企業のCSR活動に注目したり、消費者が、いわゆるエシカル消費(倫理的な消費)を考えるようになってきている状況を考えれば、こうしたウォッシュ行為には危惧を覚えます。
こうした行為が行われるのは、各企業が公表するレポートに、標準となる指標がないことがあります。
例えば、GRI(Global Reporting Initiative、国際的な非営利団体)が制定する、サステイナビリティ報告の世界標準となるガイドラインはありますが、そこでも、具体的な指標まで示されているわけではありません。
すると、各企業が公表しているCSRレポートでも、自社にとって都合の良い数字だけを載せることも可能で、見る側にとっては、会社間の的確な比較もできないのです。
また、ESG投資が注目される今日では、投資家向けに、財務情報だけでなく、非財務情報も開示する統合報告書が出されるようになっています。
この動きは世界的に広がっていて、日本の企業も少なくとも500社は統合報告書を出しています。しかし、そこでも、世界共通のスタンダードな指標はできていないのが現状です。
各企業がCSRやSDGsに本気で向き合い、環境、社会、経済、の3つの観点から、持続可能な世界を考えていくサステイナビリティに取り組み、それを評価する人材や消費者、投資家が拡大している今日では、財務情報が比較可能な数字として表されるように、非財務情報も比較可能な指標を標準化することが、非常に重要であると言えます。
すなわち、CSR(企業の社会的責任)を「見える化」することによって、企業のガバナンスや男女の機会均等、働きやすさ、ハラスメントへの対応など、その企業の非財務情報、非財務価値がわかりやすくなり、他社との比較も容易になるのです。
そうした可視化は、生活者や投資家の企業に対する評価を明確にすることに繋がり、それは、社会全体によるサステイナビリティに繋がっていくと思います。
次回は、私たちにできることについて解説します。
#1 企業の社会的責任とは?
#2 なぜ、CSRに取り組まなければならないの?
#3 CSRは企業の収益に繋がる?
#4 見せかけのCSRとは?
#5 私たちにできることとは?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。