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#4 公平な賃金制度は企業にとってマイナス?

明治大学 経営学部 教授 遠藤 公嗣

持続可能な社会のためにも賃金制度の改革が必要

「パートタイム・有期雇用労働法」の施行によって、人件費の負担が増えて困ると考える経営者が多いようです。もちろん、そうした面もあるでしょうが、この新法によって賃金制度の国際基準に近づくのであれば、人材確保においては有効になります。

いまの日本の賃金制度では、有能な外国人の雇用が難しいことは、一部の経営者の人たちは認識しています。

例えば、インドでは有能なIT技術者が育てられています。彼らはインド国内にとどまらず、世界中の企業に進出しています。いま、GAFAと言われる巨大プラットフォーマー企業には、多数のインド人の技術者がいることが知られています。

ところが、日本企業はまったく人気がありません。その理由はいくつかあると思いますが、年齢や勤続年数重視の日本の賃金制度では、彼らの働くモチベーションにはならないことも一因です。IT関連の企業経営者はそれを深刻に捉えています。

しかし、グローバリゼーションが進み、少子高齢化も進む日本では、外国人の雇用問題は、IT関連企業だけの問題ではなくなるはずです。

そもそも、日本の賃金制度が維持されてきた背景には、一家の生計を支えるのは男性の正社員で、主婦のパートや学生のアルバイトは、いわば家計の補助であったり小遣い稼ぎ、という構造があったからです。

そのため、正社員の男性には待遇を手厚くし、対極にある非正規雇用労働者は処遇が悪くても構わない、という、ある意味、労使双方の了解があったと言えます。

しかし、バブル崩壊後、人件費を抑えたい企業は非正規雇用形態の労働者を増やしていったため、現在では、労働者の約40%が非正規雇用労働者になったのです。

しかも現在は、非正規雇用労働者の約半数は、家計の補助ではなく、家計を支えるために働いている人たちになりました。つまり、暗黙的な了解であった非正規雇用労働者に対する不平等が、もう無視できない状況になってきたということです。

ならば、非正規雇用労働者も正社員にするべきだ、という議論がありますが、それは荒唐無稽だと思います。

正社員の給料が年齢にあわせて上がるのは、男性正社員が一人で一家の生計を支えているという、日本的な生活給の考え方があるからです。

しかし、一億総活躍時代などと言って、女性や高齢者にも働いてもらわなければならない少子高齢化の日本社会では、男性正社員を優遇する制度自体が、この社会変化に対応するための有効な手段ではないからです。

要は、外国人の雇用の観点でも、パートタイムでも有期でも働いてくれる人を増やしていくという観点でも、日本の旧来の賃金制度では無理なのです。

それを維持しようとするのではなく、公平な賃金制度をつくるという考え方から生まれ、国際基準になっている「同一価値労働同一賃金」の制度を取り入れていくことが、日本の企業の成長にとっても、日本社会が持続していくためにも、いま、必要なことだと思います。

次回は、変わる働き方について解説します。


#1 非正規雇用労働者に対する格差がなくなる?
#2 同一労働同一賃金が実現する?
#3 日本の賃金制度は普通じゃない?
#4 公平な賃金制度は企業にとってマイナス?
#5 生き方に合わせた働き方ができる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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