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#3 日本の賃金制度は普通じゃない?

遠藤 公嗣 遠藤 公嗣 明治大学 経営学部 教授

国際基準は「同一価値労働同一賃金」

日本では、例えば、新卒で東京本社の会社に正社員として入社すると、数年ごとに地方の支店に転勤し、仕事の内容は行った支店で営業であったり事務であったりと変わり、また数年後に本社に移動し、経理課に配属される、などということは普通だし、その間、給料が上がっていくというのも普通です。

つまり、日本では、正社員に支払われる賃金の指標となるのは、年齢と、その会社に何年勤めているか、ということであり、職種ではないということです。

日本では当たり前の、この賃金制度ですが、世界から見ると非常に特異です。欧米や近年の中国やインドなどでも、労働者の賃金は、年齢や勤続年数ではなく、従事する仕事、すなわち職務内容に対して支払うという考え方です。

欧米ではもともと職務に支払う賃金の考え方がありましたが、アメリカで1920年代から職務内容を評価する方法(職務評価)の開発が進み、それがILO100号「同一価値労働同一報酬」条約(1951年)の規定に影響しました。さらに改良された職務評価の方法と100号条約の原則は、あらゆる不当な賃金差別を排除するのに適していたので、1960年代以降になると、ヨーロッパ各国にも普及したのです。現在では、ILO(国際労働機関)が推進する、国際基準とも呼ぶべき原則と方法になっています。

この国際基準が「同一価値労働同一賃金」原則と方法です。すなわち、異なる職務内容であっても、その価値が同一ならば、同一の時間あたりの賃金額を支払う、ということです。

つまり、単に「営業」だから、「経理」だから、「研究開発」だから、この給料ではなく、職務内容の「職務評価」があり、その評価において同一の仕事に従事する人たちには、同一の賃金を支払うという考え方です。

労働者が男性であっても女性であっても、若くても高齢者でも、あるいは、外国人であっても、また、非正規雇用であっても、それを理由に賃金に格差をつけてはいけないということです。

賃金制度の世界基準は、もう、ここまで進んでいるのです。「同一労働同一賃金」すら実現できていない日本は、ある意味、非常に遅れているということです。

4月1日に施行された新法には、この世界基準の流れに追いつこうとする意図もあるのではないかと、私は思っています。

なぜなら、旧態依然の賃金制度では、国内の労働市場の変化に対応できないのはもちろん、グローバルな人材雇用においても圧倒的に不利であるからです。

新法の、ある意味、健全な解釈による推進が、バブル崩壊以後30年にもわたって停滞する日本経済を立て直すきっかけになると、私は考えています。

次回は、人材雇用について解説します。


#1 非正規雇用労働者に対する格差がなくなる?
#2 同一労働同一賃金が実現する?
#3 日本の賃金制度は普通じゃない?
#4 公平な賃金制度は企業にとってマイナス?
#5 生き方に合わせた働き方ができる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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