
2023.01.27
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4月1日から、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されましたが、それ以前の法律にも同一労働同一賃金の考え方はありました。
しかし、裁判所なども、例えば、通勤手当や休日手当などに格差をつけることは違法という判決を出していますが、基本給に差が出ることは認めています。
簡単に言えば、個別の手当に格差があるのは不合理だが、正社員と非正規雇用労働者の会社に対する貢献の違いなどにより、基本給の格差は不合理とは言えないということです。
ところが新法では、まず、従来の法律にはなかった「基本給」という言葉が条文に用いられています。手当ではなく、賃金の本質部分を明確にしているわけです。
そして、そこに差をつける場合の基準もいくつか挙げています。すると、その基準のどれかに則って基本給に格差をつけるならば、それは不合理とはならないと解釈できるわけです。
そして、その基準のひとつに、「職務の内容」が挙げられているのです。
この「職務の内容」を「同一の労働」と捉えるならば、まさに、「同一労働同一賃金」となるわけです。すなわち、この部分をどのように解釈するかで、今回の新法の運用が変わってくると言えます。
いずれにしても、前回述べたように、この新法によって、非正規雇用労働者は賃金の格差について声を上げやすくなっています。そのことを経営者側も意識するはずで、それだけでも格差の是正に繋がるでしょう。
さらに、それでも納得できない格差に対して非正規雇用労働者が訴えることになれば、司法の場で、「職務の内容」に関する解釈が明確になってきます。
それは、日本の賃金制度を変革していく大きな一歩となる可能性があるのです。
実は、日本の賃金制度は、国際基準から見ると、唯一と言って良いほど特異なのです。これを変革して国際基準に合わせていくことは、経営者にとっても必要なことだと、私は考えています。
次回は、賃金制度の国際基準について解説します。
#1 非正規雇用労働者に対する格差がなくなる?
#2 同一労働同一賃金が実現する?
#3 日本の賃金制度は普通じゃない?
#4 公平な賃金制度は企業にとってマイナス?
#5 生き方に合わせた働き方ができる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。