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#3 日本のプラごみ対策は遅れている、は誤解!?

永井 一清 永井 一清 明治大学 理工学部 教授

日本のごみ処理の社会システムは世界でも優れている

いま、皆さんは家庭のごみをきちんと分別して出し、回収してもらっていると思います。

家庭ごみの回収の取り組みは、1964年の東京オリンピックの開催に向けて始まり、やがて、燃えるごみと燃えないごみを分別するようになり、さらに細分化していったのです。

2000年には、循環型社会の形成を目指し、「循環型社会形成推進基本法」が成立します。そこには、「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」などの個別法が含まれています。

現在では、こうした法に則って、分別して出されたプラスチックごみも処理されています。

処理の方法としては、プラスチックを再生して使うリサイクルや、燃やして発電するごみ発電などもあります。

しかし、プラスチックを繰り返し再生していると劣化が進み、使えなくなります。

また、ごみ発電も地元の同意を得るのが大変ですし、逆に、一度稼働すると、ごみを安定供給し続けなければならず、それは、ごみの量を減らすリデュースの取り組みと相容れないことにもなります。

ごみは最後の処理手段として埋立てられます。ところが、むやみに埋立てをすることはできず、国内の埋立ができる余地は20年分を切っていると言われ、その対策が議論されているところです。

とはいえ、現状、ごみの分別回収と、その適切な処理はしっかり機能しています。これは、日本人の几帳面さと、ごみ処理の技術革新が進んだためです。

つまり、日本では、回収されたごみが山林に積まれるようなことはないし、海に漂うこともないのです。

しかし、世界には、ごみの管理が上手くいっていない国も多くあります。家庭ごみを家の前に捨てていたり、集めたごみを川や海に捨てたり。

それは、その国の人々が無責任というわけではなく、それが昔からの風習や習慣だからです。しかし、もう、それが許されるわけではありません。

そのため、日本のごみ回収の仕組みを学んだり、取り入れようとする国も多くあります。

一方で、日本国内の川や海岸、近海にプラスチックごみが多く見られることから、日本のプラスチックごみ対策は遅れていると指摘したり、日本と海外の国の話を一括りにした報道も見られます。

しかし、あらためて言いますが、ごみ処理の社会システムが構築されている日本では、回収されたごみが川や海に散らばることはありません。

自然環境中に排出されるごみのほとんどは、人為的なポイ捨てと不法投棄なのです。

いま、町内や学校、会社の周りを美化活動できれいにしても、翌朝にはごみが捨てられています。ボランティアの人たちが川や海岸を清掃しても、すぐにごみが散乱してしまいます。

要は、日本のプラスチックごみの問題は、ごみの管理システムの問題ではなく、私たち一人ひとりのモラルの問題なのです。しかし、これは、解決するのが最も難しい問題です。

次回は、プラスチック代替の取り組みについて解説します。

#1 「石油=悪」ゆえに「プラスチック=悪」、は誤解!?
#2 マイクロプラスチックは有害、は誤解!?
#3 日本のプラごみ対策は遅れている、は誤解!?
#4 植物由来プラは自然に還る、は誤解!?
#5 レジ袋は紙袋にすれば良い、は誤解!?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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