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#1 「石油=悪」ゆえに「プラスチック=悪」、は誤解!?

永井 一清 永井 一清 明治大学 理工学部 教授

プラスチックは現代の生活にとって、なくてはならない貴重なもの

最近、プラスチックが環境に悪影響を及ぼしているという話を耳にした人も多いのではないでしょうか。特に、海や海洋生物に対する悪影響は深刻であると言われたりします。

では、そもそも、プラスチックとはなんなのか。あまりにも身近なものでありすぎて、意識している人は少ないのではないでしょうか。

私たちの身の回りにある材料を大きく分けると、金属、ガラス、陶器、木、紙、布以外のものは、プラスチックとゴムです。

高校の教科書などで、高分子化合物と習ったのではないかと思います。そのなかで硬いものがプラスチックで、柔らかいものがゴムです。

軽くて丈夫で、自由に成形加工できる特性があるので、私たちの生活にとっては、非常に使い勝手が良いものです。

ゴムにしてもプラスチックにしても、もともとは樹液を使っていましたが、人工的に合成できるようになり、広く普及しました。

特に、原料となる石油が安く入手できるようになったために、1950年代から世界中で爆発的に広がりました。いまでも、例えば、同じ大きさの容器を作る場合、紙や金属、ビンなどよりも、プラスチックが一番安くできるのです。

最近では、身近なあらゆる物に使われていますし、コンタクトレンズやメガネのレンズもプラスチックです。水族館の水槽のガラスもプラスチックに置き換えられてきています。

すなわち、プラスチックは、私たちの生活になくてはならないものになっているのです。

ところが、このプラスチックが環境に悪影響を与えると言われるようになってきました。

その背景には、原料となる石油が、火力発電所で燃焼する際に二酸化炭素を生成し排出していることから、地球温暖化問題と絡めて「石油=悪」と見なされているからかもしれません。

しかし、それは資源として貴重な石油の価値を誤解しています。石油は宝です。

石油の主成分の炭化水素、つまり炭素も水素も地球環境にある元素であり、私たちの身体を支える、生命の源でもあります。

実際、医薬品にも炭素は使われていますし、食品添加物や洗剤にも使われています。だから、「石油=悪」、ゆえに「プラスチック=悪」というのは、完全な誤解なのです。

実は、プラスチックについて、このように誤解されていることが多々あるのです。正しい知識をもてば、プラスチックごみ問題について、どう取り組み、なにをすべきかが、ちゃんと見えてきます。

次回は、マイクロプラスチック問題について解説します。

#1 「石油=悪」ゆえに「プラスチック=悪」、は誤解!?
#2 マイクロプラスチックは有害、は誤解!?
#3 日本のプラごみ対策は遅れている、は誤解!?
#4 植物由来プラは自然に還る、は誤解!?
#5 レジ袋は紙袋にすれば良い、は誤解!?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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