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#3 第5世代は、なにがすごいの?

井家上 哲史 井家上 哲史 明治大学 理工学部 教授

様々な機能が現在の10倍になる第5世代

2020年の実用化を目指している第5世代、いわゆる5Gですが、その要件は、「超高速」、「大容量」、「多数同時接続」、「超低遅延」、「高信頼」の5つです。

まず、「超高速」と「大容量」ですが、最高伝送速度10Gbpsが設定されています。これは、1秒間に10ギガのデータを伝送するということで、現在の第4世代の10倍に相当します。

「多数同時接続」は、同時に何台接続できるかということです。災害時など、一定のエリアで多くの人が一斉に通信すると、繋がらないという経験をしたことがある人も多いと思います。これは、輻輳(ふくそう)という現象です。

そこで、5Gでは100万台/㎢が設定されています。これも、現在の10倍に相当します。

これには、同時通信している電波を処理するプロセッサーの使用権を管理し、交通整理する、スケジューリングという技術が使われます。また、基地局に相当するものを増やし、通信妨害をなくす仕組みも活用されます。

「超低遅延」は、通信の遅れを極力小さくするということです。これも、現在の10分の1である1ms(1000分の1秒)に設定されています。

しかし、これは非常に難しい課題です。そもそも、電波は光の速度以上にはなりません。光は秒速30万kmといわれますが、実際、高度約35000kmの静止衛星の通信は往復で約0.2秒(200ms)かかります。

5Gでは、データの処理の時間も含めて、この遅延を1msにするというのですから大変です。

技術的には、やはり、基地局を増やし、ユーザーの端末により近いサーバーで処理をするエッジコンピューティング技術や、ネットワークを仮想的に分割し、帯域中のある部分は高速大容量に、別の部分は高信頼、低遅延にするなど、用途に応じてデータを送る単位を変更する、ネットワークスライシング技術などを活用することが考えられています。

こうした要件をクリアすることで、「高信頼」も得られます。すると、現在の4Gをはるかに上回る通信環境が構築されることになります。

そこでは、人と人の通信だけでなく、近年、注目されているIoTなど、モノとモノの通信の機能も大幅に向上します。それは、社会を大きく変える可能性を秘めていると思います。

次回は、第5世代によってなにができるようになるか解説します。

#1 移動通信システムの“世代”って、なに?
#2 移動通信システムの進化でなにが変わった?
#3 第5世代は、なにがすごいの?
#4 第5世代でなにができるようになるの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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